第9章 〜偶然か必然か、縁は導く〜
「え…っ、お待ちなさい乱!話はまだ……」
まだ終わっていない。そう言おうとした麻衣だが、乱は自分も横になると麻衣に掛布団をした。そしてトントン、とお腹を優しく撫でられる。幼児を寝かしつける時の行為だ。すると、障子越しに入った淡い月光が部屋を明るくした。乱の綺麗なセミロングの茶髪や、彼が主人に向ける慈愛の眼差し、微笑が見事綺麗に美しく映える
「ほら。もう夜も遅いし、安心して休んで良いんだよ?ボクらの麻衣様…。可愛くて堪らない大事な愛し子」
「……っ」
突如、乱の声を聞いて睡魔に襲われ始めた麻衣。うつらうつら、と重い目蓋に僅かな抵抗を見せた。だが、しかし。ほんの数秒の格闘の末に、眠気に負けてしまったようだ。
そんな朧げな意識の中で彼女は、自分が寝た後で一度起きた報告をしに行くだろう乱に。何か言おうと口を開けるが、結局言えないままで閉じてしまって……
翌朝、朝餉のために誰かが起こす時間まで、ぐっすり眠っていたのだった───