第9章 〜偶然か必然か、縁は導く〜
「連れの人も含めて全員遺体から離れてくれ!蘭君と園子君は警察と病院に今すぐ連絡してほしい!それから誰もレストランから出ないように注意してくれないか?」
「う、うん…!分かった!」
「任せて」
友人にテキパキ指示を出した若者───世良は、事件慣れしている態度で現場保存を行う。その隣では、蘭と園子が警察と病院に事件の通報をするのだった
*
それから数十分が過ぎた時刻。警察と救急車が到着してから、現場は一気に忙しくなった。被害者は直ぐさま病院に搬送され、レストランの周囲に規制線が張られる。男性が倒れた位置には、テープで場所と態勢を残した。それから、諸々の作業を終えた後に事情聴取を始めるのだが───
「……今回は君達だけでの参加か」
「毎度ごめんなさい、目暮警部……」
ため息混じりの言葉を放たれ、いたたまれない蘭がシュンとなる。目の前には、恰幅が良い茶色のコートを着た刑事───目暮十三と、その部下の若い男女の刑事三人が不憫そうな表情で立つ。それを園子が不本意そうに、世良は苦笑いで無言を返した
と言うのも、三人が事件に巻き込まれたのは、今回を含めて数知れず。彼女達の事件の遭遇率は、本人もうんざりする程なのだ。そして目暮は事件の度に世話になっている捜査一課の警部で、部下の高木渉と千葉和伸、唯一の女性刑事たる佐藤美和子も、通報するたび何百回と顔を合わせている
閑話休題。さてと、目暮がわざとらしい咳で世良へ本題に切り込んだ
「ゴホンッ!それで、事件の流れを説明してくれ、世良君」
「と言っても、僕たちは離れた席で食事をしていたからね。急に男性が立ち上がったと思えば、喉を抑えて苦しみだしたんだ」
「その毒だけど、青酸系で被害者は窒息死していたよ」
「そうだったんだね…」
自身の曖昧な証言に肩を落とす世良は、高木の捜査報告に思案顔になる。その間、僅か数秒で顔を上げると申し訳なさげに首を横振りした
「……悪いけど、僕は事件に関わりそうな話なんて無さそうだ。さっきも言ったように場所が遠いし、不審な言動を見かけたわけでもない。蘭君と園子君はどうだい?」
「私も…」
「私も無いわ…」
「そうかね…」
世良に次いで、蘭と園子も心当たりはなしだと言う。目暮は少し落ち込んだが、あくまで彼女達は通報者だ。確認を兼ねて最初に聴取を行なっている