第9章 〜偶然か必然か、縁は導く〜
鶯色に、燃える様な赤、幼い焦げ茶色の髪と目をした人間離れの美丈夫達。前者の二人は成人なのか高身長な美形の男達で、三人目は恐らく小学生の顔立ちが整った少年だ。服は少年が紺のGパンと白い半袖Tシャツ、黒い上着を着るのに対し、大人二人が威圧的な黒いスーツ姿なので、一層注目される集団なのであった
彼らは揃って壁側の隅に柔和な表情を向けており、仲間がもう一人隠れているが三人の位置ではよく見えない。だが、彼らの元に注文したらしい食事が運ばれてきた時だった。赤髪の男の陰からひよっこり、綺麗な女性が姿を現わす。「あ!」今度は蘭と園子が一緒に驚いた声を上げる
「世良ちゃん、あの子よ!私達が前に言ってた女の子!赤髪のイケメンの隣!!」
「えっ…あの子が?」
園子の言葉で、またも世良が驚愕した。偶然、会いたいと思っていた人物が同じ店内にいるとは。しかも例の女性だが、連れの男達に劣るものの相当な美貌だった。腰までありそうな艶のある黒髪をポニーテールで纏めてくくり、二重の焦げ茶色をした垂れ目やスッと通った鼻筋、それから仲間に穏やかな微笑を浮かべる桜色をした唇。そして服装はベージュのロングワンピと、黒いサンダルの素朴なスタイルだ
「へぇ〜。君達から聞いてた通り、随分お淑やかな雰囲気の人だな…」
「でしょ?私達も第一印象そんなんだったのよね。おまけに口調が敬語だったし、立ち居振る舞いも丁寧で凄く綺麗だったから、さすが名家の令嬢って感じで風格と威厳ありまくり!私じゃ無理ね!」
「まったく、もう……園子だって立派なお嬢様じゃない」
遠目ながらも納得する世良に、園子が少しお茶目に同意した。それに呆れる蘭が突っ込めば「あはは」と身近な令嬢が苦笑する。以前の彼女は、嫌悪を露わに愚痴を零していたが今は違った。友人達に感情を吐露し、胸中を整理して落ち着いたのだろう。件の女性に悪印象は無く、寧ろ好意的に変化した
だが、それは兎も角、閑話休題───
敢えて発言を否定しないのは、園子の評価に賛成だからだ。感情的で活発な園子と、大和撫子で穏やかな女性。初対面での印象だけだが、性格の高低差を感じていた。加えて、護衛と思しき者達(ポアロの出来事と服装から予想した)もいるので、尚更違いが明らかに見える。近づくことも躊躇ってしまう。コナンはよく普通に近づけれたな、と世良は褒め言葉としてそう思った