第8章 〜探偵達のそれぞれの思い〜
例えFBIやCIAと云えど、海外の組織でも許されない。興奮しているコナンの肩を掴み、沖矢は強く言い聞かせる
「よく聞くんだ、坊や。政府が護っている榊麻衣───いや、榊家という組織は日本の国宝とほぼ同格の扱いだ。つまり、興味本位で詮索するべきじゃない。国家そのものを敵に回すぞ。それに海外の警察も日本の警察も、彼女達に不審行為をすれば例外なく裁かれても文句は言えん。反逆罪でテロリストになる」
「…っ?!そ、そんな……」
こうして、コナンは沖矢の言葉で、漸く事実を飲み込む事が出来た。正に茫然自失で床に膝をつき、コナンが「くそっ!!」と頭を抱えて叫ぶ
せっかくFBIの協力で、ある程度の情報を得る事が出来たのだ。初対面では酷く対応されたし、二度目も殆ど教えてもらえなかった。だから今更、反逆罪になるのは嫌だが、綺麗サッパリと諦められるだろうか。それは否。コナンの探究心と好奇心は、頭脳が良い故に他者より強い。秘密を暴く行為に対して、執着の様なものを持っているのだ。
沖矢は、コナンをこれほどまで謎解きに依存させる存在に、改めて興味を抱いた。決して、パソコンに届いた警告文や反逆罪になる事を恐れないわけではない。だが、警戒されても邪険に扱われない、そんな方法ならばある。悔しがるコナンの頭を撫でて、沖矢が一つの提案を出した
「……諦めるのはまだだぞ、坊や。確かに彼女達を詮索するのは危険だ。黒い噂も裏社会との繋がりもないし、調査で純粋に潔白だと証明された。然し、だからこそ君が体感した異様さが謎だ。こればっかりは、データベースじゃなく身辺調査で直接関わる必要がある」
「そうだよ…。だけど失敗続きなんだ。何度も探りを入れたんだけど、絶対に言おうとしない。だからって、『言えないの?』って不安を誘うと、逆に此方が悪くなる。今までの手段が、自分の行動が、当然だった事が正論じゃ通じない……」
「ならばそれを逆に考えるとするなら、詮索しなければ良いんだな?」
「……え?」
沖矢の意図が読めないコナンが、戸惑ったように顔を上げる。「どういうこと?」そう聞く少年に、沖矢は不敵な笑みを浮かべた
「彼女達の基本的な情報は既に吸収できている。俺と坊やの二人の力なら、些細な事から解明できるさ。今後は慎重に、詮索を緩めて、自らボロを出すのを待つんだ。近々、接触を試みるぞ」