第6章 〜闇夜の邂逅に白き魔術師、驚き好きの鶴も添えて〜 前編
けれど。麻衣はこうも続けた
「でも一応、仕掛けは凝ってますよ?護衛の一人が悪戯趣味なので、是非にと改良したのですが…」
「おいおい、主よ褒めてくれるな。刃生には驚きが必要なんだ。想像しうる出来事だけじゃ、心が先に死んでつまらんだろう?」
何故か嬉しそうにそう言って、ニヤリと不敵に笑った護衛の一振り。悪戯趣味の正体は鶴丸だ。褒め言葉として受け取っている。真っ白で儚げな見た目の彼だが、活発な性質で頭上に腕を組んだ
「それに聞いたぞ、怪盗きっど……。奴は俺にそっくりらしいじゃないか。真っ白い衣装を好んで着たり、まじっくで人をお茶目に驚かせ、熱烈に追いかけられる…。似通いすぎて由々しき事態だ!」
「……たいこういしきでつくったのですね」
「ああ、当然だろう!俺の縄張りで、好き放題されるなんて我慢できるか!!」
何なんだそれは、と麻衣以外が引いた。聞いていてコントのやり取りである。熱弁の具合が負けず嫌いの子供だ。そして、本人は本気(マジ)な顔で目をギラつかせており、その情熱に周囲が呆れる。唯一流されなかった麻衣は、純粋に穏やかな笑みを浮かべた。すると、
「大船に乗った気で期待しますね」
「(ん゛ん…っ!!いや、まずは動機の幼稚さにツッコむべきだろう!)」
と、不覚にも見惚れそうなほど綺麗に笑う少女に、何故か咳払いした安室が改めて内心で突っ込みを入れた。心中が少し騒めきたったが、表面は真顔で通し切った。尚、小五郎や刑事達も例外ではないのか、惚けた顔のまま頬を赤らめる
「………」
ところが、そんな中、一人の警官が麻衣達の後ろにある扉を凝視している。気づいた人間は残念ながらいない。顔が帽子の影で見えない事が、人知れず怪しげな雰囲気を放っていた
*
「───……さて、犯行予告の十分前だな。全員その場を離れるんじゃねぇぞ?」
辺りが静寂で暗闇になる時、豆電球が照らす廊下に中森の慎重な声が響いた。異様に殺気立ってピリピリするのは、因縁と言える相手故か。兎も角、肝心な刑事達や探偵の配置は、隠し場所の扉を包囲する様に二列の半円で展開している。師弟の探偵は陣形の中央だ。廊下が大きな空間になっており、麻衣と護衛達も隅で見守る
「では、毎回恒例の変装対策!思いっきり隣の顔を抓れ!」