第29章 〜奇々怪々〜
《うおっ?!なになに今のくもり硝子の向こうの影?!あそこは誰もいないはずだろ!!》
《ひっ?!唸り声が聞こえる……何でだよ?!》
《……今の誰の唸り声だ?悲鳴も遠くで聞こえるし!!》
そんな言葉と共に恐怖で怯えるスタッフが病院をぐるりと回って下に降り、何とか外に脱出すると動画は終了した。同時に安室もハムサンドを完成させてカフェオレのカップの隣に置き、動画をじっと見ていた太鼓鐘達に問いかける
「……見てみてどうです?」
「んー、ぶっちゃけ全然怖くねぇな!」
「そうだね。普通の新設のお化け屋敷じゃないから不思議な事が起きても変じゃない」
「変じゃないって……そんなわけ、」
「……知らないだけだ。さっきの動画も大量出血で体の中身が見える男も映っていただろう?」
「「えっ……」」
いただきまーす、とハムサンドを食べだす太鼓鐘から思わぬクレームが飛び出した。別に聞きたい事はクオリティへの不満や、専門職のアドバイスでもない。ましてや、太鼓鐘と光忠の惜しむ声に続いた大倶利伽羅の言葉は、一人挟んで座るコナンや安室をギョッとさせた
何しろ彼らは専門家として慣れている。コナンや安室はスタッフが驚いた謎の声や音にぞわわっと不快感が込み上げていたのに。彼らはそして何より、大倶利伽羅の言う特徴で登場した人間は……
「……お兄さん何言ってるの?そんな見た目がえげつない人、全く見かけてないよ」
「あれ、そうなのかい?だったらさっきの発言は無視していいよ」
「はっ?!出来るわけねぇだろ!」
薄気味悪くて冷や汗を流しながら「いない」と答えたコナンは、光忠にあっけらかんと証言を誤魔化されてしまって思わず素に戻って突っ込んだ。すると作業が終わった安室がスマホを弄りだし、とある20代後半と思われる男の写真を三人の前に見せた
「もしやこの人ですか?」
「あっ!この写真の男もいたぜ!」
「元が病院だったら亡くなる人も多かったんだと思うよ?さすがに君らは見えないかぁ。姿が酷いから見えない方が良いけどさ」
「(安室さんのスマホの画面、被害者の写真だ……)」
太鼓鐘と光忠が「この人だ」と同意した写真は、亡くなった患者本人の写真だった。しかも大倶利伽羅がちらっと溢した話によれば、相当最悪な姿に見えたらしい。他にも沢山見えたようにも言っている