第29章 〜奇々怪々〜
*
そして別の日、コナンが安室に会いにポアロへ行ってみると、カウンター席で真っ黒なスーツを着込んで片目に眼帯を付けた男が安室と談笑していた。ポアロに入ってドアの前で立ち止まったコナンは、楽しげな男の風貌を見た途端に息を呑んで顔を強張らせた
「(なっ……黒ずくめで眼帯?!安室さんが親しそうに話してるぞ!まさかこの人、組織のNo.2のラムかもしれないなのか?!)」
男は全身黒ずくめの怪しい服装をしており、片目は黒い眼帯をしているが、もう片方は綺麗な蜂蜜色の瞳を晒している。足は座っていても分かるぐらいにすらっと細長く、上半身は服の上から見ても鍛え抜かれたと分かるぐらい逞しくてガタイの良い高身長。顔は色気を感じさせる男らしい眉目秀麗な美男だった
コナンは一度もポアロで鉢合わせした事がないが、初来店かもしれないし隠れた常連客かも。男は色んな意味で危険さを匂わせる雰囲気を纏っており、コナンは密かに警戒しながらカウンターに駆け寄った
「ああ、いらっしゃいコナン君!好きな席に座って良いよ」
「うん!ありがとう安室さん!」
コナンに気づいた安室が自由で良いと言うので、早速カウンターの怪しい男に男に声をかけにいく
「お兄さん!僕、一人なんだ!隣座っても良い?」
「ん?ああ、隣の席は二つ埋まってるよ。後から来るヒト、トイレに行った連れが二人座るんだ。だから一つ空けた席なら座って大丈夫だよ」
男はコナンが喋りかけると、怪しい見た目と裏腹で甘くて優しい微笑を浮かべ、柔らかい口調と声音で返事をしてくれた。なので良いよと言われた席に触ったコナンは、セルフの水を置きにきてくれた安室にオレンジシュースとケーキを頼んだ。密かに緊張でカラカラになった喉を、水で潤しながら再び男に話しかける
「もしかしてお兄さん、ポアロ初めて?僕は常連でほとんど毎日来てるんだけど、お兄さん見かけた事って無いから」
「うん、今日が初めてなんだよね。実は仕事仲間がこのお店をとっても気に入っていて、僕も料理が大好きだからぜひとも人気が高いハムサンドを食べてみたくて!」
「……え?」
まずは無難に続けて話してみるとやはり男は常連だったらしいが、どう見てもホストかバーで働いてそうな男が料理を好きで、一人称も僕だと聞いて思わず拍子抜けしてしまった。あまりにギャップがすぎる