第29章 〜奇々怪々〜
どうやら詰みね、探偵さん。そう呟いた灰原は変わらず興味がなさいそうで、サイトを開いたままのパソコンを放置で椅子から降り立った。これまでずっとコナン達はリビングの中央で自身の身長よりも高い椅子に座っており、柱の周囲を囲った大人の胸の位置まで高いドーナツ型のテーブルを使っていた
「……人間じゃ不可能だとして、どうなってるのか知りたい。もうちょっと調べて良いか?」
「お好きにどうぞーーー」
諦めの悪いコナンはパソコンに張り付いており、それを見やった灰原が肩をすくめて自由にすればとうんざりそうな態度をとる。しかしあまり気にしていないらしいコナンが、パソコンを動かそうとマウスに触れる前に難しい顔で更に言い含めておいた
「だけど貴方、注意しなさいよ?江戸川コナンは存在しない架空の人間なの、工藤新一も世間に忘れられて失踪扱い、組織や一般人の一部は死んだと思ってるわ」
「は?いやいや、なんだよ突然!そんな分かりきった事……」
「分かってないわよ。工藤くんは油断が過ぎるわ」
現実的な観点で言えば、自覚があったなら今頃キッドキラーはテレビに出ていないだろう。子供のフリも「テレビで見た」と誤魔化してるが、内容の割に逃げる言葉が杜撰すぎた。小学生の教育範囲を超えて理解出来た以上はその分賢いと思われるものだ。故に今まで鋭い人間に散々疑われ、分かる者には正体がバレた事もあった。もしも黒の組織や警察がコナン達を調査したら、欠陥だらけですぐに正体がバレるだろう。だから今のように頭脳を誤魔化さず、事件現場や組織に接触するのも自重すれば周囲を巻き込まずに済む
「それは、そうだけど………」
自覚が足りずに軽率な部分を指摘されたコナンだったが、灰原が言いたい忠告は現実問題以外にもある
「それに江戸川くん。貴方も私も安室って人も、本当の自分と存在しない自分が内にいる。だからこうして姿や人格を変えて、偽名まで使って死んだフリをしている私達は歪んだ存在なのよ。相手は正真正銘の死人だわ、興味本位て詮索するのもほどほどにしなさい」
「べ、別に俺らは似てなんかねぇだろ。元々幽霊なんて信じてねぇし、引き際ぐらい弁えるっつの……」
そう言い返したコナンは顔をムッと顰めて、プイッとそっぽを向いて拗ねてしまった