第5章 〜怪盗キッド対策会議
「……それで、坊やが聞きたい事って?」
中腰に屈んだ麻衣が問うた。その瞬間、眼鏡の奥の瞳がキラリと光って探りに入る
「あのね、この前会った時は警察の協力を拒絶したでしょ?なのに如何して後から受け入れて、会議まで起こすのか気になっちゃって」
「あら、知りたいの?簡単に言うと、縄張り争いというやつです」
「ふーん、縄張り争いって?」
「場違いだったの。無縁の余所者が神の御前で捕物をするのがね。まず罰当たりだし、管理警護は我が家だけのお役目なんです。家宝を含めて紛失・破損は御国の問題に発展しますよ?仮にも国の保護区なんです。御国に尽力する頼れる警察でも、任せられるほど安易な事じゃありません」
「へ、へー…。だから嫌だったんだね」
意外と真面な答えだったらしい。いや、しかし、本当にそれだけだろうかと思う。コナンは更に追撃してみた
「じゃあ、護衛のお兄さんが何も言わないのって、隠し事してるわけじゃないんだね!」
「「……は?」」
すると、コナンの台詞に麻衣はコテンと首を傾げたのみ。大倶利伽羅も後ろの方で怪訝そうな顔つきになる。アレ、とコナンも不思議に思った。そうしたら、本人達で顔を見合わせると大倶利伽羅がため息を吐いたのだ
「……勘違いするな。俺には馴れ合いや、群れるつもりが毛頭ない。妙な理由で疑われたり、見当違いな事を言われると不愉快だ」
「あ、はい……疑ってごめんなさい、お兄さん……」
此処に来て初めての会話である。睨むような鋭い目つきと嫌にそっけない冷ややかな口調、不機嫌を隠さない低過ぎる声音はコナンも少し怖気付いた。しかし嘘を言ってる様子もないので、悔しいが子供らしく謝っておいた
「これで満足しましたか?坊や」
時間切れとばかりに麻衣が問いかける。
「うん!でもボク、もっとお姉さんが知りたい!」
「……私を?それは駄目なの。ごめんなさいね?守秘義務は死んでも守る主義なの…。でないと君たち国民を危険に巻き込むし、守り抜くべき母国を裏切ってしまうから」
「…!!」
最後、駄々をこねるコナンに言った真剣な目をする麻衣の言葉に、離れて様子を見ていた安室が息を呑んで目を見開いた────