第27章 〜ホラースポット・ポアロ2〜
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「……で?どうして博士と私を呼んだわけ?」
あの後、蘭達と別れたコナンは灰原と阿笠と共に、阿笠の家へビートルに乗って向かっていた。警視庁から暫く進んだ時に、助手席の灰原が後部座席に座るコナンへと振り返る
「あ、ああ。多分灰原に聞いた方がいい思って……」
「どうせ貴方の事なんだから、怪しい人か事件の話でしょ?何が引っ掛かっているのかしら?」
微妙に気まずい表情をしながら頭を掻いたコナンが、頬杖をついて窓の外を見ながら灰原の顔を伺っている。そんな怪しげな態度を見てはじっとり睨め付ける灰原だったが、彼の呆れるほどの好奇心など慣れっこなので早くしろと急かした。すると数秒の間、真下や隣の座席に目をやりながら話すのを迷っている素振りがあり、「何よ、やっぱりやめる?」と聞いた灰原の声で漸く決心がついたらしい。ゆっくり顔を上げたその少年は、至って真面目な表情のまま想定外な話を口にした
「灰原だったら自分が見えない何かを、一緒の誰かが見えるって言ったらどうする?信じるか?」
「……は?」
灰原はその質問に口を開けて惚けてしまった。まず間違いなくそういう系統の話を否定する側のコナンが、真剣な顔つきでそのような質問をするのだ
「ちょっと、本当にどうしちゃったの江戸川君?」
「いいから答えてくれ。俺と蘭だけ分からねぇ何かが起こったんだ。『けがれ』と『しょうき』って何だ?」
「!!それって、まさか麻衣の言葉?」
ありえない光景を目撃してしまって不審がる灰原だったが、重ねて問い詰めてくるコナンの言葉に少女がしっかり反応した。麻衣が何度かコナンの前で漏らしていた単語だ。灰原はその意味を知っている、そうコナンが確信したと同時に、灰原もこのやりとりで察したらしく再び呆れた視線を注ぐ
「……まったく。一体どんな状況か分からないけど、実際起こったのかどうかも分からないんでしょ?だったら結局信じるかどうかはその人の勝手、証拠が無いんだから迂闊に言えないわ」
「……」
「それと『穢れ』は精神的なみにくさ、罪や災い、血液なんかに生じるとされる不浄を指すの。『霊障』はまさにそのまま、見えない何かが起こした災いのことよ」
「それって何かの隠語か?」
「隠語じゃなくて神職の業界用語よ、辞書にも載ってるわ」