第27章 〜ホラースポット・ポアロ2〜
「(って事は、麻衣さん達の職業的には安室さん達の体験が重大な意味を持っていた?)」
コナンは考える時の癖で腕を組み、顎に指を添えて警視庁での記憶を振り返る。麻衣は問題ない事ならば聞くと教えてくれたが、決してそれが十分な答えとなって知れたわけじゃない。結局どうしてポアロの遺体が事故死なのか、そこから二次被害が予想される理由も一切分からない
恐らくせめてものヒントは、園子が麻衣に渡した曰く付きの骨董品とそれに纏わる書類だろう。そこに書かれた会社の人間達……骨董品に携わった担当者達が危険になると予想しているのだ。きっと最後の意味深な台詞も、本人は何も無いと言っていたが、大事な答えを秘めているに違いない
ならばどうして普通の事故で済ますのか、怪死している犠牲者が出ているのに。現場で起こった怪現象の説明もされていない。安室や世良は事故を専門家である麻衣に委ね、個人的調査をする気はないらしいが、コナンはやはり気がかりすぎて放っておかなかった。確かに全ての人達からの信頼は得るのは難しい、けれど知らずにいるにはあまりに闇が深いのではないのか
「……んだよそれ、碌に明かされないまま事故として秘匿されるのか?そういう話ほど、真実としてきちんと公表するべきだろ」
「そう単純な話ではないのよ、工藤くん。探偵がよくやる推理ショーも同じでしょ、それを聞いた誰かが何かしらに悪用する可能性があるもの」
「……は、」
溢れる不満を隠さず眉間に皺を寄せているコナンだったが、単純じゃないと諭す灰原の言葉は彼自身が今まで考えやしなかった可能性を指摘した。決してありえない事態ではない、実際そういう事件に巻き込まれた事がある。
かつて自分の本当の父親・工藤優作が執筆してきた作品の中で、一部のトリックが犯人よって悪用された経験があった。それを灰原に言われて思い出したコナンは、そこまで考えつかなかった己を悔やんだ
自分が憧れている名探偵が見せる最大の見せ場、そんな推理ショーが華やかさの裏に孕んでいる闇は想像以上に濃ゆいのだ
「それに知覚できない物を理解しきれやしない。だって私達にとっては何もないんだもの、麻衣達にしか分からないものもあるの」
ただそれだけで世界は変わる、灰原の小さい声がそう呟いた