第27章 〜ホラースポット・ポアロ2〜
「……っ、それじゃあ言っている事が不自然だわ。新たな犠牲者が出るかもしれないのなら、他殺の可能性を疑うべきよ」
率直に聞こうか迷っているコナンが、言葉も浮かばぬままにその口を開こうとしたその時。躊躇いがちにそう言って尋ねたのは、目暮が出て行った事で一人残った警察官の佐藤だった。恐らく次も同じような死者が出ると言われた以上、只の偶然という見解だけは納得出来なかった。しかし麻衣は困ったように眦を下げ、悲嘆する表情で言うのだ
「普通の連続事件であればそうでしょうね……。ですが、例えば容疑者や死因になる物が存在せずに、怪死を起こせる何かがあるとしたなら」
「「……え?」
「いいえ、何でもありません。兎も角、今はその方達の無事を祈るばかりです。これ以上誰も犠牲者が出ないようにーーー」
麻衣が喋っている話は所詮『例えば』だ。凶器や有害な物質があるから身体は傷つき、原因もなく死に至る命はない。そう考えては「言葉遊びかよ」と悪態を吐きつつも、麻衣の憂いを帯びた眼差しや机の上で異様な雰囲気を放った木箱が全員の胸中を騒つかせる。そういった彼らの心の変化を察知しているのか否か、麻衣は資料の続きを再読し始める清光を見た後、いきなりパンッと両手を打ち鳴らして仄暗い空気を断った
「はい。なので、後の捜査は我々を信じてお任せ下さい。皆さんはこれで聞き取り調査を終了します。ご協力ありがとうございました。それから園子さんは依頼品もお預かりしますね、依頼者ご本人には連絡を取らせて頂きます」
「え、ええ。おじ様にきちんと伝えおくわ」
「それじゃあ、下まで私が蘭さん達を見送ります!その間、お二人だけになってしまいますが………」
これにて聞き取り調査が終わった一同は警視庁を出ることとなり、園子が麻衣との話を終えた後は佐藤がきちんと出入り口まで見送りに行こうと名乗り出た。しかし佐藤が退室すると刑事がいない為、やはり不便かと伺おうとしている彼女に麻衣が一言「大丈夫です」と返すとコナン達一行はそのまま警視庁を後にした───
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佐藤が宣言通りに警視庁の門前まで見送ってくれて別れた後、一同は見覚えがある黄色いビートルの車が道路脇に停車しているのを発見した