第27章 〜ホラースポット・ポアロ2〜
「で、でも世良ちゃんが言ってたよね?防犯カメラはあの人の体に痣も黒煙も映していなかったって。なのに……」
「例え映ってなくても、神職ならば視えるものもあります」
重ねて問うた蘭に麻衣がそう言うと同時に、部屋を出ていた目暮と佐藤が防犯カメラの映像を保存したDVDとプレーヤーを持ってきた。二人は機材を持って戻って来ると安室も作業を手伝い、天井に設置されたプロジェクターを下ろしてプレーヤーの接続を素早く終わらせた。そして目暮と佐藤は席の真後ろにプロジェクターがあるので佐藤は麻衣の隣に、目暮は反対側の安室の隣に立って再びカメラの映像を観る事に
「それでは再生しますね。亡くなった男性の来店時間までは早送りでお見せします」
「はい」
佐藤の合図に全員が頷いて見せるとDVDの映像がスタートし、今日(こんにち)の開店時間から客が出入りする店内の様子が『早送り』で映し出される。すると特に不審な来客が無いまま蘭達がポアロに入ってくる姿が見え、店員の安室と談笑しながらオーダーを取ったり、運ばれた物を飲み食いしている時間帯が映され始めた。「……男性が来るのはそろそろですね。普通のモードにしますよ」そんな呼びかけと共にリモコンを操作した佐藤が、『早送り』からただの『再生』ボタンを押して切り替えた
そうしたら丁度園子が持っていた『おまじない』の壺の話をしており、暫くすると例の痩せ細った男がポアロに訪れるのが映った。接待を始めた安室が案内中に突然苦しみ出すと、安室と世良がすぐさま男性に駆け寄って対応しようとするが、数秒後には「喰わないでくれ」と叫び声をあげて息絶える。すると男の死亡を確認した安室と世良によって、遺体の元に行こうとするコナンとその体を抱えて止めている蘭、そんな彼女よりも一層顔を青ざめさせている園子を店外に誘導して現場保存と警察への通報を行った
コナンはこうして改めて当時の状況を振り返って何とも複雑な心境に陥る。偶然監視カメラの角度で見えてはいないが、きっと怪奇現象が起きて人知れず安室と世良は驚いた事だろう。そして当時、自分のそばにいた園子は誰より顔色が悪く恐怖を抱えていたのだろう。映像を注意深く凝視してみたが、挙げられた事象は何一つ分からないし見えもしなかった。一体どういう仕組みで起こっていたのか、ぞれぞれが指している意味とは何なのか