第26章 〜ホラースポット・ポアロ1〜
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麻衣と清光が捜査協力を任され、コナン達も聴取の続きをする為に目暮達と共にパトカーで警視庁へと向かう事になった。何故か江戸川コナンでもなく、工藤新一に連絡を取ることもない。死因は調査中の段階であるが、考えられる可能性は、手遅れになった病か毒か危険な薬物だ。もしや麻衣の実家が神社を営んでいるのを知り、由来する知識が関わって必要としているのか。或いは実家が兼業として政府に属し、そこでの仕事が深く関係している事件だろうか
一応、随分と前に赤井が国際問題を起こすギリギリで捉えた情報があった。宮内庁の特殊事案対策課という秘密組織の存在と、そこに麻衣の実家が所属していて活動の些細が不明である事実。麻衣の実家と仲間達の仕事は、正に秘密のままでいるのが理想の組織なのだ。無闇に追求してはならない人間と日本の深淵、解明できない底なし沼の様な謎を見据える者達。彼らが引いた一線を踏み越え、知る事は諍いを齎す業だ。影で活動しながら国民の平穏を守る存在。麻衣達が秘める役目というのは、何方も普通の仕事ではないだろう
しかし当事者である己が頼られないのは納得出来なかった。自分なら必ず事件が解ける、そんな拗れた執念と自負があったのだ。コナンは先に実家の向かいで住む阿笠にメールで連絡を入れた後、ポアロの裏口を出てパトカーに乗り込む一行の中で最後尾にいる黒田に駆け寄った
「あれは黒田刑事の判断なの?!どうして麻衣さん達は必要で、探偵の方は頼ろうとしないの!非現実な見方な捜査するなんて警察がそんなんでいいの?!」
「結果に間違いがないのなら、その才能が何からきても本物だ。人には人の役割があり、適材適所で知識を役立てる。君には知らない現実、見えない真実があるのだ」
「……っ」
後ろからコナンの大声で呼び止められて、律儀に振り返った黒田は厳かな顔で一層の睨みを効かせた。そして激しい苛立ちをぶつけて勢いのまま喋っていたコナンだが、言い返された含みを持った台詞に反抗的な目つきはやめずとも図星だったあまり臆してしまう。すると落ち着ききったコナンの様子をみて、黒田は声を顰めながら続けて言う
「……しかし、彼女の護衛から君への伝言を受け取った」
「僕に伝言?」