第26章 〜ホラースポット・ポアロ1〜
黒田が改まって清光からの伝言があると言うので、コナンは一体何の用かと首を傾げながら聞き返した。コナンは清光に伝言される内容に覚えが無かったが、続いた黒田の言葉に己の失態を自覚した
「まずは君が『事件を詮索するのに夢中すぎ』だと懸念していたよ。普通の大人より賢く探偵の元で暮らす身だ、毎日事件に遭遇し続けていれば嫌でも慣れてしまうのだろう。逮捕がスムーズになるのは喜ばしいが、現場の対応ばかりに囚われてはならん」
「どうして?僕は警察に協力出来て嬉しいよ、したくてやってる事なんだ。なのになんで……」
「君の優秀な頭脳と心意気を嬉しく思う。しかし、平穏に生きる市民は犯罪も死も非日常のものだ。知らずに過ごせるように配慮され、余程凄惨なものか全面的に問題視すべき事以外はニュースにしない。それはどんな探偵達でも例外ではない。だから事件に踏み込みすぎないくれ、その慣れは危険なものなんだ」
「っ!!」
自分は違う、望んで事件に慣れたんだ。そう言い返そうとしたが、喉の奥で言葉がつっかえた。いくら己が良しだと考えていても、側から見れば異様なものに映ってしまう。確かに近所の喫茶店で死人が出たのに、動揺せずにあれこれ考察するのは可笑しいと思う。民間人の前で死因について騒ぐのも良くなかった。事件に必死で周りを見れずに振る舞っていたのだ。清光はコナンの態度に相当呆れているのだろう。自分でも幼い子供が思い通りにならずに、不機嫌になって癇癪を起こした態度に似ている自覚がある。こうしてきちんと冷静なれた今、蘭達に対して、特に安室に謝るべきではないか。改まってそう思うと、これ以上この場で追求する気も失せていた
「それから二言目には、『自分だけで解決しようと拘りすぎている』とも言っていた。勿論そういう意地も大事ではある、彼らも君の正義感まで否定しているわけではない。その勢いに翳りと危うさがあったからだ、と憂いていた」
次いで二つ目の言葉を聞くと、清光達にどれほど自分の内面を見抜かれているのかを知った。周りを誤魔化す余裕がないほど、事件に関わろうと躍起になっていた。コナンは一人心を曇らせたまま、蘭達と別々のパトカーに乗って警視庁を目指したのだったーーー