第26章 〜ホラースポット・ポアロ1〜
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ポアロで事件が発生してから二十分後、麻衣と加州清光はポアロと毛利探偵事務所のビルに近づくにつれて異変を感じていた。まるで肌を刺す様な悍ましい気配、霊感の鋭い者を怖気づかせる緊張感。ポアロの前では大勢の人間が半円に集まり、澱んだ空気と穢れを発生させている
「一体どうしたんだ?こんなに集まって」
「お店の中で事件ですって……」
「やっぱりこの街、物騒だよなぁ」
騒めく人集りの外から中を覗いた清光は、自身の後ろ立っている麻衣を振り返り無言で首を横に振った。敢えて言葉にはしない、「既に死んでいる」と言えば聞こえた人間達が一層混乱するからだ。周囲の不安がる通りに米花町は事件頻発地帯、遠目にわかる強い穢れと人混みがあれば其処で刑事事件が起こっているのだ。しかし麻衣達は知っている、これがただの死人を出した事件などではないと
一先ず麻衣と清光は両手を合わせ、死者の冥福を祈る為に数秒目を閉じながら黙祷を捧げる。そして清光が一歩前に進み出るや、麻衣と離れない様に加減している力できちんと手を繋ぐ。二人は人混みの中を掻き分けながら臆さず歩いていき、半円の中心にいる待ち合わせ相手達に会いに行った。すると彼らは、ポアロの入り口前で何やら話し込んでいるようだ。ポアロで仕事中の安室が困り顔で受け答えし、安室の対面側でコナンが目つきを鋭くして何かを訴え、世良と園子と蘭が宥めている状態である
「……そんな筈ない。安室さんはホントに毒か病死だと思ってるの?」
「今の段階だとね。あの男性の体には外傷がない、あの場に毒物も無かったんだ。気づかず放置していたとしか考えられないのでは?」
「だけどあのおじさん、最期に『喰わないでくれ』って言ってたよ?きっと他殺の可能性もーーー」
「こら!駄目でしょコナンくん、そういう大事な話を大声で言わないの!」
蘭に言葉を遮ってまで厳しく叱られ、一層機嫌を損ねたコナンがもう一度口を開こうとしたが、言葉は声にならずに別方向から新たな人物達が会話に参加してくる。それが呆れた顔で溜息を吐き、コナンの事を見下ろした加州清光だった。
「騒ぎ過ぎて目立ってんよ、ちょっとは周り気にした方がいいんじゃない?てか、一体どういう状況なわけ?」
「「!!」」