第24章 〜疑わしきは、誰なりや〜
沖矢は今までの人生で一度も体感したことがない。言葉で語り尽くせぬ恐怖が、つい先程で身近に迫っていた。ずっと恐怖で全身が総毛立つのを堪え、何とかコナンと灰原以外を家に帰し終えた沖矢。「次はコナンくんですね」と告げて、彼の居候先の毛利探偵事務所を目指す。ところが、それをコナンが自分はいいと遠慮し始めた
「僕はいいよ、寄りたいところが出来たから灰原と沖矢さんで帰って大丈夫」
「寄りたいところ?ですがアレが何処を彷徨いているのか分かりません。一緒に行った方がいいのでは?」
「えっと……それはそうなんだけど、場所が遠いし迷惑かけるの嫌だから」
沖矢は保護者代理として同行しようとし、コナンがそれを迷惑だからと愛想笑いで断ろうとする。それを傍目で静観していた灰原は直感した。適当な理由で二人を遠ざけようとしているコナンにジト目を向けて言い放つ
「そう、私と沖矢さんを先に帰して一人でアレをかぎまわりたいって事ね」
「そ、そんなんじゃねぇよ」
「駄目ですよコナンくん。一応黒人系に見えなくはなかったですが、何というか、服や肌色の見慣れた『黒』ではなかったでしょう」
疑ってかかる灰原に否定するコナンだったが、沖矢からも信用がなかったようで重ねて注意を受けた。実際、今までコナンは一度不審に思えば、満足するまで首を突っ込む好奇心の塊で。周りが釘を刺しても滅多に聞かず、翻弄してきた事は数知れない。しかし今回ばかりは本当にそのつもりじゃない少年は、続いた沖矢の言葉に頷いてしっかり話す事にした
「うん、あれは何かが違う。直感だけど僕らだけで探り回る事も、直接顔合わせるのも駄目だと思った。だから協力出来ないかお願いしに行くだけだよ」
「?、一体誰に?」
意外、と書いてある顔で驚く二人に、コナンが頭を片手で掻き乱しながら気まずげな顔を背けて答える
「……麻衣さんの所。あの人の仕事は巫女さんだし、こういう不気味な事案は慣れてるって聞いたことあるから」
「!!」
「え?!ちょっと貴方、どういう風の吹き回し?てっきり自分一人で何とかしようとしてるとばかり……」
「お前……。あのな灰原、俺だって最近は自分の良し悪し考えてるっつーの」
酷く罰が悪そうにしているコナンの言葉に、心底驚くあまり失礼な言葉を並べる灰原。沖矢はそんな少年の頼り先に度肝を抜かれた