第24章 〜疑わしきは、誰なりや〜
何故だ、どうして瞬きの間(ま)に誰かがそばにいる。振り向く直前までは確かに誰も立っておらず、道端に人通りなんて無ければ、中から出てくる気配も無かった。純黒、何処までも深くて暗い、恐怖を煽られる続ける色。コナンは眼前の誰かを相手に硬直しては動けずにおり、隣の沖矢昴も冷や汗をかくくらいに動揺していた。そして全員が悲鳴をあげられないほど驚き、咄嗟に目線を合わせちゃ駄目だと勘づいた。何も見えない、黒以外の色味など無かったのだ。相手の顔は屈み込むようにしてそばにあるというのに、彼方の息遣いやら気配すら微塵も感じなかったのだ
「(……『これ』はなんだ?組織を相手するのとは別の恐怖、殺気もないのに姿を見るのが恐ろしい!!)」
沖矢はガタガタ震える体を情けないと叱咤し、自力で金縛りのような状態から抜けると子供達の体を押しやりながら一刻も早く逃げようとした。顔を合わせないよう頭を下げたままで、口早に愛想の良さを忘れた言葉でその場を離れる為に口を開いた
「……っすいません、本当に我々急ぎの用事があるんですよ。失礼しますね!」
普段なら誰にも丁寧な対応を心がけているが、半ば無理を通して言うが早いか五人を連れて公園の出入り口から必死に離れた。すると沖矢が動いてくれるまで瞬ぎ出来なかった体の圧が抜け、そこからは全員が決して振り返る事なく走り出す
もっと足掻いて走れ、絶対止まるな、振り向くな。そんな自分達の脳内警鐘に従い、彼らはひたすら例の黒いモノから必死に逃げていた。そして公園を通り過ぎて初の十字路を初めて右折し、公園の入り口と此方が互いに見えない事を確認すると全員の身体中から力が抜けた。瞬間、ドッと押し寄せる疲れで子供達はその場に尻餅をつき、沖矢は走った疲れとは別で荒い呼吸を繰り返す
どうやら、公園の出入り口にいた黒いナニかは後を追ってこなかったようだったーーー
*
あれからやはりパニックに陥った子供達は、沖矢とコナンと灰原で自宅まで送り届ける事になった。それぞれの両親への説明としては、「不審者に近づかれてパニックになった」と詳細を省いた説明に留めておいた。実際、三人ともそれ以上の表現出来る言葉を出せず、理解が追いついていないのだ
ただの勘だが、あれは簡単に推し量るべき相手ではない。犯罪者特有の雰囲気はなく、警戒すべき認識を外れた得体の知れない何かだ