第22章 〜大阪心霊現象ミステリー 追求編〜
ところが、麻衣や青江や数珠丸だけは起きて当然のように座ったままで、ジッと机上に置かれた湯呑みを観察し続ける。そう、僅かに細められた彼女達の瞳が、まるでそこに何かがあって見極めようと凝視しているような。それにコナンは内心、またこれだ、と三人の様子を遠巻きに観察しながら見逃さない
何度も湯呑みがあった机上と、慣れた様子の麻衣達とを交互に見ながら彼らが気掛かりにしているものを探す。けれどやはり、コナンには察する事が出来なかった。一体何を見つめ、何処まで理解が及んでいるのか。己を誰より頭脳明晰と自負していたコナンと平次は、何も分からない現状に秘かな焦燥を感じている
「……いつもながら、こういった異常に驚く事が出来ない私達は感覚麻痺ですね。単に専門と一般の落差が激しいだけですが」
「うん、普通は僕らみたいに慣れてるなんて超常的だしね。正に知らぬが仏さ、知らないからこそ闇を怯えずにすむ。『おばけなんていないさ』を言えるものさ」
「そうですね、こういう深淵は覗かないに限ります」
コナン達にとって常軌を逸した恐怖に慄く中、それでも麻衣と青江と数珠丸による隠す気のない意味深な会話が交わされる。さりげないやり取りのようだが、彼女達は自分の異様さを悲観するでもなく話していた。この在り方は、麻衣達に斯くあるべきなのだ。『理解できずとも無理はない』、『むしろ踏み込んでくれるな』と。そう読み取った探偵一行と三船夫婦が何か言うべく混乱している頭を必死に働かせるが、誰かが行動に移す間もなく麻衣が「さて」と気を取り直すべく声を発した
「次に何か起こる前に原因の撤去を急ぎましょう」
「……ですが麻衣さん、木箱の事なら肝心の場所が分からないのでは?ご夫婦の話では家のリフォーム中に何も見つかった話は無かったとーーー」
確かに、怪現象のトリガーが木箱にあるならそれを撤去すればいい。しかし業者によってくまなく改造された以上、建物内では何か発見できる望みは薄いのだ。だから安室は麻衣に如何するつもりか問おうとしたが、ふと『もしかして』と勘が働き、まさかと不気味な悪寒に愛想笑いを引き攣らせる
「あの、もしや例の木箱、地面に埋められていたりするんですか?」
「断言は出来ませんが、その可能性は大いにあります」