第22章 〜大阪心霊現象ミステリー 追求編〜
「(やっぱりこうなんのかよ、どうなってんだ……っ)」
平次と小五郎とコナンがそれぞれ疲れ果てた顔でそう漏らす。最初はただ純粋に、警察も苦労するほどの難事件を暴けることが快感だった。推理が終わった時の達成感、周囲からの尊敬と、嬉々とした褒め言葉を貰えることが嬉しくて。けれど、こんな完全犯罪は知らない
完敗したと横並びで机に突っ伏す探偵達と、その正面に座って湯呑の緑茶を上品に飲んでいる麻衣。その落ち着いた所作を振る舞う隣で、安室が険しい表情をしつつ腕を組んで考え込む
「……こうなると以前の警察捜査と同じく、犯人もトリックも証拠が一切ないと考えるべきですね。そして麻衣さんが仰っていたあの話ーーー」
安室が示す『あの話』とは、麻衣と三船夫婦が視たという悪夢の一部始終。実際に起こったかどうかも怪しい猟奇殺人事件の光景だ
「鵜呑みとするなら、この家の何処かに少女の探し物が詰まった箱がある筈……。と言うより、この一連の怪現象がそれを原因とするなら、諸悪はやはりその事件の加害者の方でしょう。そもそもこの家の事案は、リアルタイムで人が起こしたにしては他者の介入が見られません。人手が無いまま起きた以外ありえない」
「「………」」
否定され続けるばかりは話が進まない。安室は項垂れる三人にはっきり現実を突きつけ、隣の麻衣に「そうですよね?」とチラリと目線だけ送って合否を問う。するとここで静かに顔を上げた探偵達の、理解出来たが故の複雑そうな目に向かって彼女が深く頷いた
「……はい。残念ですが、この現実を受け入れて頂くしかありません。ちょうど今もです、ほら、全員一度も離れてないのに湯呑みが二種類も」
そう言った麻衣に全員が揃って机の上を見た。そして各々悲鳴を上げて、自身の前に存在している『二種類の湯呑み』に咄嗟に体を仰け反り慄いた。実は一つは早朝に一度集まった際、三船典子が茶を出したのだがその時使われたものらしい。そして、もう一種類は二度目、つまり今の集いで女性陣が用意した分がある
しかし可笑しいのだ、最初の集まりの後には机に何も無く、出したお茶の片付けを誰もしていない。二度目の話し合いでも誰も席を離れておらず、机自体にも妙な仕掛けもない。これには最早、コナン達さえ気味が悪いのか、一歩一歩徐々に後退っていく