第4章 〜ある少年の独白 〜
けれど……そう思って彼女達に近づいた結果、予想外の事態に直面してしまう。
質問責めにしすぎた余り、女性の護衛だという二人の男達がオレを怒鳴ったんだ。曰くデリカシーがない、余所の子供が深入りするなと、嫌悪や侮蔑も隠さず、(見た目だけ一応) 小学生に非難を浴びせた。これには思わず呆然となってしまう。今まで同じ事を怒られてはきたが、ここまで過激に言われた事はない
だって、俺はシャーロック・ホームズの様な素晴らしい探偵を目指している。探偵にとって好奇心はとても大事な要素なのだし、周囲の観察や情報収集、相手のプライバシーに深入りする捜査も業務の一環で重要な仕事だ。体は子供でも、本来の俺は『高校生探偵』と謳われた人間。先刻の言動も許容範囲だし、事情聴取する資格も人望もある。なのに、どうして……───。
「(……俺は悪くねぇっ!!)」
何とか大声で叫びたかったが、気づけば周囲の注目を集めて一緒の席にいた蘭が駆けつけた。顔面蒼白で俺を叱りつけ、四人組に頭まで下げている。自分の監督不行き届きだ、と俺を無視して彼女が謝るんだ。そして、俺が動揺して困惑する間に、話はどんどん進んでいく。内容は殆ど一方的な説教で、俺の言動が赤裸々に語られた……───
「偶然居合わせただけの浅い関係…。なのに、一体どうして何席も離れた小声の会話を把握してたり、会話の最中の見知らぬ人間に平然と笑顔で割って入ったり、態と耳を澄ませた会話を偶々って平気で偽ってみせたり、他人の領域を当然みたいに土足で踏み荒らしたりしちゃうかな?俺たち、その子に何かした記憶は欠片も持ってないんだけど…」
「例え友人知人であっても、自分の知らぬところで事件を知られてちゃ不愉快だと思わないか?不幸な話なら尚のこと嫌だろう?なのにキミは不謹慎で、嬉しそうに他所の厄介事で大はしゃぎした…。どうやら事件の話しか興味がなく、被害を受ける者の心労よりも好奇心を満たしたいらしい。悪いが、これは警察と俺達だけの問題でな、余所者は深入りせんでくれ」
そう言って、二人が語った苦情は全てありのままの事実と常識。何一つ漏れや偽りなどなく、厳格に俺の失態を指摘した。確かに、誰であっても被害に遭った話を質問攻めにされたら嫌悪感が込み上げる事は分かる。自身のデリカシーの無さや、不謹慎さ具合は周囲に何度も怒られてきて己も自覚しているのだ