第4章 〜ある少年の独白 〜
けれど、探偵たる者はそういう存在でなくては。言葉巧みに相手を誘導し、情報を引き出す常套手段は悪趣味だけど必要で。今まで勇んで協力する者もいたし、賞賛だって浴びてきた。なのに頭ごなしに叱られ、此方の言い分を告げることも出来ない
その不満が胸の内をフツフツと湧かしていく。探偵の仕事は、事件や事故で様々な謎を解決することだ。相手がどんな身分の人でも、事件の前じゃあ関係ない
それこそ、例え、『護衛に守られる様な格式高い家の令嬢』であっても。
『危険に晒される秘密』を持つような、特殊で機密を重んじる相手でもだ。
謎は全てこの俺が説く。工藤新一が、解き明かすんだ…!!
*
しかし、ありったけの説教の後は、何とも言えない結末を迎える。
麻衣さんと呼ばれた連れの女性が、護衛達の態度を謝罪したのである
「……この度は我が護衛が店内を騒がせ、御子様を酷く叱りつけた事、どうか何卒お許し下さい」
「従者の失礼を心より反省し、ここにお詫び申し上げます。……此度は誠にすみませんでした」
そう言って彼女は、俺達に対して綺麗な所作で頭を下げた。気品、崇高、そんな言葉が一挙一動に現れて見える。本音の謝罪だ。すぐに見抜くと、身構えていた俺達は反応に戸惑った。てっきり怒られると思っていたのだ
ところが、彼女は護衛達の意思を尊重しつつ、自分達の非を肯定すると丁寧に謝ってくれたのだ。良家の娘と打ち明けただけあり、その奥ゆかしさや優雅な振る舞いが出自の高さを一層際立たせた。如何やら彼女は、雰囲気そのままの穏健さを持つ寛容な性格らしい。最後に俺が不本意ながらも頭を下げると、あっさり赦してくれた
「それでは、これにて我々は失礼します」
ただし、丁寧な言葉と一礼の後に、四人組はポアロを出て行ってしまった。店内に彼らを止める者はおらず、事件の事も苗字も聞けず大部分が謎で終わった
だから、次また会ったら彼女達の正体を徹底的に暴いてやろう。終始穏やかだった女性を始め、護衛達は只者では無い。彼らが悪事に手を染める様には思えず、寧ろ圧倒される善と神聖な雰囲気のみを感じるのだ。おかしい、彼らは一体何者なんだ?!
こうして、俺たちの殺伐とした出会いは唐突に運命の始まりを告げた。真逆、再び意外な場所で会うとは、この時予想もしていなかった
ーーーコナンside終了