第22章 〜大阪心霊現象ミステリー 追求編〜
彼女は言っていた、後の言い訳に苦労するほど怪事件に慣れていると。件の悪夢が危険なものであると忠告し、夢の中で意識がある事さえも当然のように振る舞っていたのだ。故に夢の中で何があったのか、何を意味するのかは麻衣以外に誰も分からない。そんな周囲の無言の催促を受け、彼女は「まずは夢の辻褄合わせをしましょう」と言って三船清次郎と共に部屋の隅で小声のやり取りを行った
無論、小五郎や平次がこういった言動に際して良い顔をしなかったものの、未成年や女性に悪影響と聞けば渋々とだが引き下がってくれた。「お前も未成年の女やけどな……」という嫌味の入った平次のツッコミは、しかし仕事で来ている麻衣には通用しなかった
そうして、数分の小声の会話の末に「……お待たせしました」と詫びて、元の位置に戻ってきた険しい顔の麻衣と強張った表情をした三船清次郎。二人の只ならぬ様子に、誰からともなく一体何がと問うより速く、麻衣が重たい口を開いて言葉を紡いだ
「……内容が内容ですので、些細を省いて伝えます。昨夜の私と三船さん夫妻の今までの夢が合致いたしました。そして、肝心なその夢がーーー」
そこで一瞬、麻衣が発言を躊躇って真一文字に口を結んで黙り込む。同時に僅かに伏せられた瞳は、言葉にするのも辛いと訴えるような苦悩に満ちていて。けれどその躊躇いはすぐに隠すように閉じられた両目に消え失せ、硬くなった声音でこう続けた
「……夢は、とても言葉を尽くせぬ凄惨な事件のものでした。裏手に建てられた廃墟の中で、大勢の女子供が惨殺される血濡れた光景でした」
「「……っ!!」」
「その犯人が殺害を終えた後、この家の庭に何かが入った木箱を持ち寄っています。恐らく青江達の出会った少女の探し物こそ、その犯人が持ち寄った木箱なのではないでしょうか」
麻衣の衝撃的な報告によって、毛利一行と平次と和葉は愕然と目を見開いて絶句する。中でも蘭と和葉は両手で口元を覆って青褪め、コナンと平次は昨夜の電話から聞こえた声を思い出しては全身の血の気が引いた
例えば物を乱暴に扱ったような騒音、例えば狂気に満ちた誰かの笑い声、例えば救助を求めて泣き叫んだ数多の子供達の声。極め付けは最後、コナンの耳に根強く残ったままの『死んでるよ』というメッセージ。筋が通っている。