第22章 〜大阪心霊現象ミステリー 追求編〜
次いで青江の後に厳しい指摘を放ったのは、ずっと静観していた筈の麻衣だった。ぐぅっと唸った平次は不満ながらも黙らざるをえない。すると麻衣達の進展がない議論に、いい加減我慢の限界とばかり三船清次郎が声を荒げる
「ええいっ!!ならばなんだ、名のある探偵を二人も雇っているのに犯人らしき手がかりを一つも掴めていないのか?!」
「も、申し訳ございません!!」
思わず反射で頭を下げる毛利小五郎と、悔しげに唇を噛み締めて視線を逸らす服部平次。堪らず怒鳴ってしまった夫の隣で、妻の三船典子も麻衣の方を不安げに見つめていた。その目は他に頼る宛てがなく、嘆いて縋る手前のような弱々しさである。そこでふと、麻衣が典子に対して思い出したように口を開く
「ああ、そう言えば奥様。貴女から頂いた依頼の文書について一つ。あれは『解決してほしい』と御座いましたが、それって具体的な分析を省いてもよろしいのでしょうか?」
「えっ?まぁ、私は別に説明されてもよう分からんし…。結果が良いんやったら細い事はどうでもええけど。それが何か?」
何故か確認された方針について、それを問う理由が分からず訝しみながらも典子は是と言った。すると麻衣は成程と頷いたが最後、ホッと安堵した微笑を浮かべて再び典子に問うていく。いつの間にやら周囲も、二人のやりとりに目を向けていた
「そうですか……。では二つ目、この家に住み始めてから十年も経っていませんね?」
「え、ええ。この家は越してきた時リフォームしたんよ。やから去年やね」
「ふむ……。ならば三つ目、リフォームとなると既に家が建っていて、土地と建物が売られていたのでしょう?以前お住まいだった方はいつぐらいから此処を売ったか分かりますか?」
「えっと……。たしかお会いした時、かれこれ十年近く放置していた、とか何とか言うとったような」
「それでは最後の質問、四つ目です。越してきた際、何か見知らぬ物を見つけませんでした?大きな入れ物などは」
「うーん、知らへんなぁ。リフォームしてから住んだもんやし、もしも何か置かれたままなら一報来るもんやし」
「なるほど、ありがとうございました」
一人満足気で典子に礼を言う麻衣に、右隣の数珠丸が「思った通りでしたね」と言った