第22章 〜大阪心霊現象ミステリー 追求編〜
突如、青江に次いで数珠丸が信憑性を高める話を続けていたが、そこを怒りで鬼の如き剣幕となった平次からの嘘つきという糾弾が遮った。同時に彼がダンッと机を拳で殴りつけ、その音に麻衣達一行以外の全員がビクリと震え上がる。そして一番驚いていたのは幼馴染の遠山和葉である
彼女がよく知る服部平次は、物言いこそキツい時もあるが嘘を吐く相手に怒鳴る事はない。寧ろ探偵らしく、言い逃れできない言葉を並べて冷静に追い詰めるタイプの男だ。なのに、そんな彼が今、感情的になって必死で噛み付かんと牙を剥いている
「俺らはあの時、きっちりアンタらの話と相手のやり取りを聞いとった!そしたら相手がこの家の廊下を踏みしめる独特な音をさせとったんやで?!」
「独特な足音……?」
ふと友人の変化に呆然としていた蘭が、平次の言葉に疑問を感じて反応する。すると、その隣では和葉も気を戻して戸惑いながらも「どういう事や?」と問うた
「別に足音なんて青江さんらが動いて出てしまっただけとちゃうん?」
「ちゃう。青江さんらがおった位置は男部屋の真ん前や、会話中に移動した聞こえ方はせんかった。ほんで二階の廊下で妙な軋み方がするんは階段側の血痕がぎょーさん点いてたあそこのエリアのみなんや!」
「「?!!」」
それを聞いて、三船夫婦と女子高生二人の顔が一気に青褪めた。彼らは服部の言葉も勿論、状況証拠をきちんと提示する意思のあった青江達も両方信じている。そして一方、またもや疑われる事になった麻衣達側は、まるで平次の取り乱し様を憐れむような、そして本当に困っている表情で肩をすくめる
「……おやおや、嘘つきだなんて酷い言い草だ。僕らは事実を突き止めこそすれ、嘘で偽る理由もなければ、その罪悪を犯す道理さえも生来持ち得ぬ性分なのに」
そう言って嘘は罪悪、とまで定義する青江の口調は、今までにないほど真剣でいて低い声。そんな彼が麻衣と数珠丸を横目に、きっぱり違うと断言しきる言葉は息を呑むほど説得力を帯びていた。そうして声音と口調だけで信頼に足ると思わせ、魅せる誠実な姿勢と発揮されるカリスマは最早麻衣譲りであった
「それに何度も言います通り、前提としてこの依頼には警察組織が噛んでいる……。なのに今尚、既に分かりきっている事で真偽を争う必要はありますか?」