第22章 〜大阪心霊現象ミステリー 追求編〜
屍人が青江達から去ったという時、彼らは消失したと表現した。移動する動作であるなら何処かへ『行った』、『帰った』と口にする筈だ。その場で消えたなどと、幽霊や瞬間移動じゃあるまいに。しかし昨夜からずっとあり得ざる事態に見舞われているのは事実であり、「もしかしたら」と心の何処かで疑念が生まれている
ハハハ、ないない、コナンはそう言って乾いた笑いを漏らした。さすがに考えすぎだと、深読みしすぎなのだと、大した意味はないと勘繰る己を嘲笑った。第一、オカルト話は突飛な想像ばかりで真面に捉える事こそ可笑しい
取り敢えず、コナンは実際に現場の痕跡を見れて満足し、現場保存をどうするかと立ち上がって、ふと前方の階段で上からトントントンと誰かが降りてきている事に気づいた。三船夫婦が起きて一階に向かおうとしているのだ
「(そうだ、三船さん夫婦に何か痕跡の上を覆える物を持ってきて貰えれば!)」
すぐにその事を思い至ったコナンは、夫婦が三階から降りて姿を見せたのを見ると少し大きな声で二人に呼び掛ける。すると彼の声に二階の廊下へ振り向いた夫婦だったが、コナンの足元で広がる真っ赤な血痕らしきものを見てしまい、彼らは青ざめた顔で口を手で覆って目を見開く。まずい、声をかける相手を間違えたかもしれない。そうコナンが気づいたと同時に、三船夫婦の悲鳴が早朝の家に響き渡ったのだった
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その後、依頼者達の悲鳴を聞いた全員が一斉に起き、廊下にあった血痕も目撃するとちょっとした騒ぎになった。一先ず血痕があった場所には三船夫婦が持っていたブルーシートを被せ、二階との移動経路には窓に梯子を設置して居間に集まった。因みに、廊下の窓は血痕の位置から外れて奥にある。やはり外部から仕掛けを用意するのは難しそうだ。ならばと、もしや三船夫婦の自作自演ではと考えたものの、それでは自分達を多額で雇うのは損であるため小五郎も服部も訳が分からない。となると、夜の警備をしていた青江達に全員の注目が刺さるが、数珠丸も揃って困ったように肩をすくめていて青江がこともなげにこう告げた
「うん、確かに真っ赤な手形の犯人は見たよ。結局誰かは分からないけどね、小さな女の子が失せ物探しをしているようなんだ」
「はぁ?!失せ物探しってアンタ、子供が深夜に他所の家に入って来るわけねぇだろ!変な嘘つくんじゃねぇ!」