第22章 〜大阪心霊現象ミステリー 追求編〜
*
あれからコナン達三人は、いつの間にやら気絶したように寝ていたらしかった。翌朝の太陽が昇る時間までぐっすりである。
そしてカーテンの隙間から漏れ出る陽光に気づき、一番窓に近い場所で寝ていた江戸川コナンが目を覚ました。彼はその後もうっかり二度目を決め込む前に動き出し、眠気まなこを擦りながら気怠げに上半身を起こす。起こしてぼんやりする事一秒、二秒、数えて三秒目に昨夜の記憶が脳裏を過り、はっきりしていなかった思考が一気に覚醒化する
「(っ!!そうだオレ、昨夜の廊下に出てきたナニかが、青江さん達と話した後で寝ちまって……っ)」
すぐに全てを思い出したコナンは、改めて廊下に面する襖の方に目を向けた。そこは昨夜に何かが現れた時、どうせ作り物だと思ったコナンと服部達を他所に、尋常ならざる薄気味悪い空気を仕切り越しに放っていた場所で。そう、あれは到底勘違いなどと言えないほどに、これまで知らなかった類の異様な気配を放っていた
「(くそっ、不思議な出来事ばっかで考えが纏まらねぇ!本当に何だってんだ?!)」
やはり混乱と苛立ちが綯交ぜになって、力一杯頭を掻きむしったコナンは徐に布団から立ち上がって抜け出した。そして小五郎と服部と安室を通り過ぎ、襖の前までゆっくり歩み寄った彼は襖を少し開けて頭だけを出すと階段側を覗いてみる。すると、そこは案の定というか、何かを引きずった時に出来たらしい真っ赤な痕跡と、真紅の手形が床一面を占めていた
「(こ、これってまさか、昨夜のものなのか?!)」
コナンは静かな動作でパジャマを着たままそっと廊下に出ると、
痕跡の前にしゃがみこんでどういったものか確認を始める。気がかりな事は自分で調べてみないと満足出来ないのだ。今回は事後であるし、昨夜と違って危険なものに無闇に突っ込んでいるわけでもない。軽く捜査するだけだ、それがコナンの微力な言い訳である
そうして一人床を視察してみれば、手形はコナンのサイズと変わらぬ子供のものばかり。引きずった跡のそばには、滴り落ちた真っ赤な水滴も見られる。これは恐らく全て誰かの血痕なのだろう。果たして本物なのか、それとも演出のための偽物なのか。それは今は分からないが、ふと疑問が湧いてコナンは首を傾げた
「(……そういやあの二人、『帰った』じゃなくて『消えた』って言ってたな)」