第21章 〜大阪心霊現象ミステリー 真夜中編〜
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一方、こちらの話は、青江達が怪奇現象と対峙したのと変わらぬ頃合いの時ーーー
その場でひらりふわりと揺蕩う光は青白く、仄かな灯りで照らす様はさながら蛍のよう。そこは一帯前後不覚になって、地に足がついた感覚も分からぬような暗い闇。正に深淵と呼ぶべき純黒の空間の中で、麻衣は五つの光の球と手を差し伸べて戯れていた。光の球は、麻衣のそばで囲う様に飛び回っている。その光景はとても幻想的なものだった
そして、この場にいるのは巫女装束で佇む麻衣だけである
「ひぃ、ふぅ、みぃ、よ、五つですか……」
光を目で追いながら数えた彼女の透き通った声が、存外静寂に包まれた空間の中ではっきり発せられた
「ここにいるのは五人分の意識、残る安室さん達は眠っていないのですね」
そう言った麻衣のそばを浮いて回る光体はなんと、別室で起きたままの安室と服部とコナン以外のもの。つまり、今は睡眠中のメンバー達の意識であるという。毛利親子と和葉、三船夫婦達ご集っているのだ。麻衣は集った彼らに呼びかける
「皆さん、これは夢です。ですがこうして微睡みながらに意識があって、同じ場所に在ります。恐らくこれがご夫婦の仰っていたモノですね」
物言いたげに左右にユラユラ揺れる光体達。麻衣がふんわり笑ってそれらに何度も頷いた。主張を理解しているのだ。
「……ええ。……ええ、はい。そうですね、実際体験しても信じ難いのは無理もない。不思議なことが起きて混乱される気持ちはお察しします」
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「……その割には驚いた様子がない、ですか。一応私は巫女の血統ですし、これしきの非科学的なモノには何度も遭遇してるので。生憎、貴方方の普通と比較するのは無理があるかと」
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「……はい?まぁ、そうですね。数え切れない回数なので、大概のことは記憶にないのですが。精々、遊んでる最中に友人の前で拐かされて、見つけてもらえた後の対応が大変だったくらいでしょうか」
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「……大丈夫でしたよ。心配して頂けて嬉しいです。それより、ここから先はとても危険ですよ。今から皆さんをこの空間から解放します。戻れば普通の夢を見れるので安心してください」