第21章 〜大阪心霊現象ミステリー 真夜中編〜
青江達がコナン達の起床に気づいて、嘘か大袈裟な証言をしている、というのも論外である。くどい様だが既に警察の捜査があって、その経過報告は挙げられている。故に若き探偵達は、またもあるまじきショックを受けた。どうか嘘であれ、疑う余地をくれと。しかしそんな願いは虚しく、廊下の青江達と正体不明のナニカのやり取りは続く
「ぁ……、ゔぁが……ぎゅゔぇお゛あ゛……」
「「((っ?!!))」」
ここで初めて聞こえた不気味なものに、三人が揃って肩を震わせた。襖越しにいるモノの正体は果たして何なのか。それは幼い子供特有の高い声であり、まるで喉を潰されたような言葉にならない言葉で青江達に何かを訴える。すると青江達は優しい声音で宥める様に答えた
「大丈夫だよ。主と僕らか君の大事なものを見つけ出す。早く帰りたいよね、僕らも君を早く還したいんだ」
「その積年の恨みは邪気となって伝わっています。嗚呼、さぞや辛かったことでしょう。憎いでしょう、痛かったでしょう、悲しかったでしょう、悔しかったでしょう」
「ひぎゅぇ……ぁゔぁが……」
「ええ、ええ、その無念はいつか報われます。罪には罰を、業には贖いを。全ての如何なる生命(いのち)も冒してはならぬ尊厳があり、それを冒涜するのは重罪です。故にその人間が確かに在った証を傷つけること、それは何をもっても赦しがたい人道に背く行いです。かの人間の魂は過ちに穢れ、然るべき処罰が下ることでしょう。だから安心しなさい、無垢で哀れな童よ」
そう言ってナニカに安堵を促す数珠丸の言葉は、その穏やかなで清廉な気質と神仏に通ずる在り方故のもの。ゾワリと不快感がしていた空気が、少しずつだが柔らかい雰囲気のものに変わっていく。すると襖越しに聞こえてジーンと感銘を受ける安室を始め、服部までも彼の徳を積んだ説法には心がほんのり暖かい心地になっていた。
けれど唯一コナンだけは違い、彼らの並々ならぬ正義感と純真無垢な信念に対し尊敬を持つと同時に、胸の奥でもやもやとした疼きを抱えていた。しかしその理由はコナン自身もはっきりと分かっていないのだが、深く考えることに無意識ながら恐怖があった。何故か知れば後悔するぞと言いたげなまでに、少年の中の本能が詮索することを拒絶してーーー
そうして、この後「どうやら一先ず消えましたね」という数珠丸のホッとした呟きを拾った