第21章 〜大阪心霊現象ミステリー 真夜中編〜
それでは行きますよ、と半ば一方的に告げるや否や、彼女がパンッと一度妙に大きく聞こえる拍手を一度だけ打った。すると、何処か陰湿で恐怖を煽っていた空気がガラリと変わる。まるで何かを弾き飛ばすように、一泊遅れで一陣の風が突如下から吹き荒れた
それによって麻衣以外の光体達がぶわりと舞い上がり、風で攫われるように暗闇の中を上へ上へと飛ばされていった。その光景をきちんと最後まで見送った麻衣は、さて、と一息ついてひたすら真っ黒な虚無が続く前を見据えた
「(……お札を渡して正解でした。元々私に執着していたのもあるでしょうが、簡単に戻す事ができました。あとは私も実態を掴んで退くのみ……。ここから先は何があるのでしょうか?)」
慣れていると言っても、全く緊張していないわけではない。麻衣は周囲を警戒しながら暗闇の中を感に任せて真っ直ぐ歩き出す。ヒタリヒタリと草履の音を鳴らしながら進んだ
そうして辿り着いた先には、一層不気味で寒気を感じる陰湿な空気を孕んだ廃墟が建っていた。麻衣は咄嗟に「うっ……」と呻いて不快さに眉を寄せた。思わずその一瞬に一歩後ずさってしまったものの、彼女は意を決して再び廃墟の中へ歩みを進めた
この時を始め、麻衣が執着される理由は生まれつきの性質にある。酔った相手が引き寄せられるからだ。彼方側と麻衣は陰と陽で対極の在り方を成す。しかしそれ故に互いを忌むも、陰は陽を呑まんと引き寄せられて酔いながらも躍起になる
そう、正に今の麻衣の状態のように、否が応にも干渉されてしまうのだーーーーー