第21章 〜大阪心霊現象ミステリー 真夜中編〜
これだけは到底信じ得ない。動く惨殺遺体など所詮作り物だ。本物に見えるリアルな出来なのだろう。相当に悪趣味な犯人だ。確認するまでもない話だし、部屋から出ない約束があるため廊下に聞き耳を立てるだけに留める
「ああ、これは酷い……。やはり主と子供達を寝かせて正解でしたね」
「そうだねぇ。ここまで誰かを憎んで、理性的な憎悪を持つモノは珍しいよ。よっぽど下衆な人間に殺されたんだね」
「ええ。可哀想に、まだ年端のいかなかった子供でしょうに。この家の人間に対して加害を加えるでもなく、大事な探し物のために夜な夜な彷徨っていたのですか……」
漏れて聞こえる会話の多すぎる情報量に、さしもの探偵として優秀な未成年二人の頭脳はフル回転でその内容を噛み砕いた
作り物であろうが、年端のいかない子供の惨殺死体があること。
それが動いていること。
それ以外の存在に触れないことから、青江達が対峙しているのはその遺体のみらしいこと。
特定の相手を尋常じゃないほど恨んでいるらしいこと。
三船夫婦に直接危害を加えるつもりはないこと。
這いずる音をさせる理由が、何か探し物をして彷徨っているらしいこと
それら全てを鵜呑みにするなら、凡ゆる疑問が浮上した。三人は頭の中でそれらを整理して、混乱しつつも挙げていく
「(あの人達の会話が本当だったら、何を探して夜な夜な彷徨(ある)いてるんだ?寧ろそんな不審な事をするより、堂々と業者かなんかを装って家を漁ればいいんじゃないのか?)」
「(ーーーいや、それ以前の問題として誰の何について恨んどる?相手を見つけたとして、何もしない保証がない。そしてそんなマジもんに見える仕掛け、どうやって家の中に潜ませたんや?俺らが廻った後に侵入したか?いいや、警察の調べで誰の侵入もなく可能な犯行なんは分かっとる。ここまでやる奴が些細なミスは犯さんやろ))」
「「((……くそっ、やっぱり可笑しい。電話の時も今も、大層な仕掛けの割にムラがある。どんな動機も違和感しかなければ、それを痕跡も残さず出来るなんて人間技じゃない。第一何をもって、青江さん達はそこまで見通してるんだ?!))」」
コナンと服部は犯人の意図を必死に考え尽くす。麻衣達ばかりに任せきるのが不甲斐なく、自分達の頭脳も多少は通用する筈だ。そう踏んでいた彼らだったが、これまた不可能なのだ。