第21章 〜大阪心霊現象ミステリー 真夜中編〜
電話の中から聞こえた声や音は、コナンの耳奥に深く刻まれている。助けを求める声、痛みを訴える声を聞いた途端、それまでの恐怖を忘れて無視できなかった。それ自体は悪い事ではないはずだ。そう言って握り込んだ両手の拳を震わせるコナンに、麻衣もまた頷いて同意を示す
「ええ、その通りです。アレが普通の電話であったならば、私もすぐに同じ事をしたでしょう。しかし、そうではなかった。あの電話はですね、少年、繋ぐための法則を無視したものなんですよ。果たして、あり得ざる事を成した異常を『無害』と捉えてて善いものか?否です、危機感が足りませんね。貴方はそんなモノに自分の声、己の存在を認識されたんですよ」
「「!!」」
「……ね?恐ろしいものでしょう?自分の何かを未知の存在に把握される恐怖。ですがご安心を、アレが気を引きたいのはあくまで私のみです。だからこそ私の端末に干渉して来たわけですし、少年と話した時は愉しそうでしたが、愚かしいと嘲笑っているようでもありました」
コナンは麻衣にそう言われた事で、再び電話のコール音を聞いた時の様な恐怖と不気味な寒気が全身を駆け巡った。息を乱してヒュッと鳴った喉、嫌な汗が出るのを感じながら絶句した。そして服部の方も、ようやく理解が及んだのか顔面を蒼白にさせている。怖がらせてしまいましたね、と眉を八の字にして困った様に笑った麻衣はコナンの前にしゃがみ込み、優しい手つきで彼が持っていた己の端末の代わりに人型の紙とお守りを袋を小さなその手に乗せた
「今から部下のところへ行って全員、縁切りとお祓いをします。幽霊や怪異は信じられずとも、こういった良くない時はお祓いするのが日本文化のお約束です。二度とこの端末にも触れないこと。少年は今晩必ずお守りを備えて下さい、良いですね?」
念入りに忠告されて頷く事しか出来なかったコナン。日本文化のお約束、即ち無意識にある暗黙の了解。探偵だからと敬遠するものではないと言われたように感じ、早くこの不快感から逃れたいコナンは大人しく従うことにした
そうして、そのまま四人で数珠丸と青江の元に行くと、「嫌なものがプンプンするね、その少年の事だよ?」と説明せずとも言われてしまい、揃って縁切りとお祓いを受けた。御神酒と塩をかけられ、お経を読まれ。これが、彼がお守りを持つに至った経緯である
