第21章 〜大阪心霊現象ミステリー 真夜中編〜
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同日深夜。探偵達に充てられた部屋では、寝相が悪い毛利小五郎だけが大きなイビキをかいて、布団を抱き込むだらしない格好で気持ち良さげに眠っていた。そして小五郎の左隣はコナンが、反対側には服部と安室が順に寝ており、四人が布団を並べていても部屋の広さは少し余裕がある。部屋の広さの分も窓は多くて大きいのだが、街灯が近くにないのか灯りは差し込む事なく真っ暗闇な室内。そんな中でコナンは唯一、ぱっちり眠れぬ両目を開いて自身の片腕を枕にし、仰向けの体勢のまま摘む様に持った物をジッと眺めていた
「(……部屋の四隅に麻衣さんからのお札を貼って、俺にはプラスでこのお守りを貰えたのは良いけども。あんな言われ方したら、誰だってビビるもんだよなぁ)」
お守りを天井に向けて人差し指で軽く小突きながら、コナンはこの日最後の麻衣とのやり取りを思い出してはため息を吐いた
そう、不覚にも麻衣に不審電話の事まで託してしまった会話の後。麻衣が「念のために渡しておきます」と言って、服の内ポケットの中から人型の白紙と、白くて無地のお守り袋を揃えてコナンに与えたのだ
「これは貴方が寝る時、人型の紙と自分の髪、爪でもいいので一緒にお守り袋の中に入れて、必ず傍に置いておいて下さい。身代わりとなって厄を受けてくれるでしょう。明日の朝にはお焚き上げもしますので」
「えっ……」
渡すと同時にさらりと説明された言葉だったが、少しコナンにとって不気味な単語が聞こえてきたのを逃しはしなかった。自分の髪、爪を入れる事、身代わり、厄、お焚き上げ。コナンは髪と爪を入れる意味が分からず、身代わりという言葉にゾッとした。それらは神職を務める者が言うなら良い物なのだろうが、今まで巫女らしい用語を口にしてこなかった麻衣が初めて出したのだ。思わず驚いて固まってしまう少年に変わり、友人の服部が険しい顔で麻衣との間に割って入る
「……あの電話、そないにヤバイもんやったんか?」
「もちろんです。探偵方があり得ざるを信じぬ様に、我々もまたその存在を信じたところで善悪問わず看過しません。未知とは恐ろしいものです。へたに障ると碌な事にならない、しかし彼は話してしまった」
「でも、だからって、電話のあんな声を無視するなんて出来るもんか…っ」