第20章 〜大阪心霊現象ミステリー 迷惑電話編〜
「うん、ちゃんと確かめたから本当だよ。何で電話が繋がってたのか不思議だけど、番号がない着信画面を見たもん。ちゃんと説明してくれるよね?麻衣さん」
俄に信じられないとばかりに目を剥いて驚いている服部、そして彼に頷きつつも、誤魔化しは効かぬと真剣な眼差しのまま質問攻めなコナン。自然と服部からの目も細まって、空気がピリピリと険悪になっていく。すると麻衣の反対側で典子の背中を黙って摩っていた安室は、様子見をやめて無理をするなという思いを込めて名前を呼んだ。彼女は明らかに体調が悪いのだ、スイッチが入ったコナン達はそんな変化に気づいていないのか、否か
「麻衣さん、その……」
「大丈夫です。安室さんは奥様の対応をお願いしますーーー」
チラリ、と視線を安室に向けた麻衣が、その気遣いをすぐに制した。そのまま小さく苦笑いを浮かべ、次にコナンと平次をしっかり見据えて言葉を続けた
「そして少年と服部さん。今の電話については、明日話が纏まり次第ご報告するつもりです。アレで警察の方に調べて頂きたい事が出来ました。ですがこの端末は通信機器としての役目を終え、どうして電話が鳴ったのかまでは私も解りません」
「……分かった。麻衣さんがその約束を守るんだったら、僕らもこれ以上踏み込まない。電話の仕掛けだけは解せないけど」
「……せやな、オレも冷静になって話したい。あんな体験初めてやったし、今も恐怖と混乱が凄くて何も考えられへんわ」
コナンと平次からの厳しい視線にさえ臆さずに、麻衣は二人に真摯な態度と正直な言葉だけを喋った。彼女の真っ直ぐ誠実そうな瞳は虚偽を孕んでおらず、晒(そら)し難い綺麗さは信頼するに足るものだ。落ち着きのある凛とした姿勢、誤魔化すことも出来ただろうに言葉を選んで応えた事、冷静さを欠いていたコナン達に向けた穏やかな声。彼らは麻衣の意思を汲んで、一先ず薄気味悪い問題からは身を引くことにした
しかし正直に言うと、未だにコナン達の中で間違いじゃないかと密かに期待している部分がある。リアリストである探偵として、非科学的なものは一切信じていないのだ。けれど電話が使えぬ端末に不気味な連絡が入り、標的となった筈の麻衣は巫女故なのか、ありえぬ事態を前にしても慣れた様子で平然としている