第20章 〜大阪心霊現象ミステリー 迷惑電話編〜
「ああ、お守りの事ですか?私達なら不要です、各々自力で如何にか出来るくらいには専門家ですからね。部下達は今夜起きていますし、私は問答無用でしょうから」
「え……?」
「「(問答無用?それってどういう……)」」
最後は少し不安を煽られる物言いだったが、麻衣は終始穏やかな声音で話している。まるで、大それた問題じゃないといった喋り具合で、三船典子も探偵達も考えすぎかと首を傾げた。ところがーーー
プルルルルッ……、プルルルルッ……
突如、ノーマルな電話の着信音がけたたましく鳴り響いたのだ。思わずギョッと驚いて顔を見合わせたコナン達は、その行動から自分達の携帯でないと分かると揃って安堵のため息を吐く。となると、電話の音は麻衣か、はたまた三船典子となるわけで
「えっと、この電話って巫女さんのものですよね?出て頂いて大丈夫ですよ?」
如何やら、麻衣のスマートフォンが鳴っていたらしい。ところが、三船典子が電話に出るように勧めてみても、麻衣は応答する事なく電話を放置している。「え?あの、出なくても…?」麻衣の様子に戸惑っている彼女の依頼者。おかしい。何故か妙な胸騒ぎとともに、電子音がずっと鳴るにつれて嫌な予感と背筋を這いずるような寒気に襲われる。それはコナンも安室も、服部さえもそうであり、三人一緒に不快感が露わな顔をしている事から彼らの中で確信する
電話に出てはダメだ。全くもって根拠はないが、探偵である三人ともが知ろうとする事さえ拒む程に直感的な恐怖を抱いている。恐らく麻衣もそうであり、理由が分かっているから出る事もしないのだろう。コナン達は理解した瞬間、ゾクリと今まで体感したことがないような恐怖に体が震え上がった
「……まずいですね」
麻衣が呟いた声を三人の耳が辛うじて拾った。ナニがと考えるのは愚問だ。このまま聴き続けたいような、逃げて行きたいような。精神的には無論後者であるが、しかし体は情けなくとも動けない
「実はこのスマホ、とっくの昔に解約していて電話が来るのはありえないんです」
ブツッ……
「「?!!」」
麻衣がそう言った直後、電子コールが不意に止まった。けれどそれは電話が切れた音ではない。やけに大きく鳴った応答の音に、全員が息を詰まらせた途端だ