第20章 〜大阪心霊現象ミステリー 迷惑電話編〜
「そ、そうですか……。って事はやっぱり幽霊の仕業ってことに?」
「まぁ、何かしら説明出来ない力が絡んでいるのは確かです。目には見えぬもの、形をなさぬもの、ヒトの体は凡ゆるものに容易く影響を受けます。だからこそ、人間は古来から理解出来ないものを恐れて来た。今の貴女の様にーーー」
「そ、そりゃあ幽霊がおるんやで?怖くて当然や!」
「はい、恐れる事は悪くありません。しかし奥様、どういった物にも結局原因となった人間の業があるのです。そして形無き悪意は幽霊だけではありません。暗示、洗脳、この世の中には多く存在します。それを判明させる為に対処法を上げました。きちんと対応すれば無事に治りましょう」
そう言った麻衣の声は優しく、幽霊のせいだと恐れる三船典子を励ますようだった。そして廊下の陰で聞き耳を立てる探偵達も、麻衣の言い回しには思うところがあった
「(結局は人間の業のせい、か……。確かに、幽霊も元は生きていた人間なんだし、酷い殺され方をした人物が後(のち)に悪霊として語られているものが多いよな)」
「(形の無い悪意、これもまた考えようやな。ホンマ、神職語る割に言い分は探偵が顔負けしてまうもんやで。せやけどなぁ……)」
彼らは幽霊を信じるか否かは兎も角、『人間の業』という捉え方には心底同意した。伊達に数多の事件に関わっていないのだ、そういう闇の深い部分を嫌と言うほど見届けてきている。しかし、麻衣の言葉を聞くまでそういった実感が湧いてこなかった
否、探偵というのは科学的な思考で推理するものだ。神秘を不可思議なままで受容する者ではないーーー。そうでなくてはならない、それがコナンと服部のポリシーだった
「……とりあえず、奥様と旦那様にはこのお守りをお渡しします。他の皆さんにも寝る時、予備で持っていた分をお配りするので、私と部下達以外は絶対に付けていただきます」
「は、はい。ありがとうございます」
仮に例外なく悪夢に呑まれたとて、その身を守れるように。気休めですが、騙されたと思って持つように。巫女の麻衣にそう言われ、三船典子がお守りを受け取ったのを陰ながらに察する探偵達。彼らは未だお守りを貰ってはいないが、理解を得ない効果は兎も角、持つ事自体に意味があるその品は持っておこうとは思った
「やけど巫女さん達は?」