第20章 〜大阪心霊現象ミステリー 迷惑電話編〜
安室がそう考えたのは、コナン達とリビングでやり取りしていた言葉選びにある。彼らもそこを含めて違和感を持っていたらしく、服部が思い出したように喋った
「しっかし、あの姉ちゃんら普通やないな。家系規模で警察に顔が効くとか、相当信頼されとる巫女さんの一族や。信じ難いけど嘘をついても意味なんてないし、不思議な連中やけど悪者やないんやろな。警察は協力相手の善人性を事前に調査する。特別怪しいだけの神職や、疑う方が失礼になるけどなんせ気味が悪い。善すぎて逆に異質感があるとか恐ろしいで……」
「うん。だからボクも最近やっと警戒心が薄れたよ。話せば真面目で善い人達だって知ったし、危険な事や間違いがあると叱ってくれる。けれど、ふとした時に意見や価値観の違いがあって、そこにだけは違和感があるというか…」
「まぁ、所詮は探偵と巫女さんやって事やろな。確かに縁起でもない事言うたんわ悪いけども、探偵は事件を解いてなんぼや。謎が前にあれば壊したくなるし、それにやりがいを持って面白がるんも、全部大事な本能や」
そんな服部の言葉に同意を示したコナンは、少し自分の感情にも納得がいかなくなっていた。隣を歩く友人兼好敵手たる男は、それを互いの職業による影響であると考えているらしい。しかし、だからといってこの諍いを『仕方ない』と、ばっさり斬り捨てるほどコナンも服部も要領が良くなかった。恐らく普段の彼らであれば、きちんと返事こそすれ反省などは形だけであったろうに
「(……兎に角、この家の謎を解けるんは俺と工藤しかおらん!優秀な人間ぶるのも今のうちや!)」
だのに、注意された鬱憤を闘争心に変えて挑もうとする服部は、コナンと二人だけで捜査に取り組もうとしている。麻衣達側に敵意が無いのは一切気づいていないのだ
そうして、やる気満々の足取りのまま奥の部屋へと続く廊下で曲がり角に差し掛かった時だった
「ーーーえ?夢の話を告げてはならない、ですか?」
「「……!」」
最奥の部屋の方から聞こえたのは、麻衣達の方に依頼した三船典子の声だった。これに探偵達は揃って顔を見合わせると、咄嗟に陰となる壁にその身を顰めて耳をそばたてる。裏で不穏なやりとりがあると直感で判断したためだ。困惑している様子の典子の声が話を続ける
「あの……、それは一体何でです?何か検討ついたんです?」