第20章 〜大阪心霊現象ミステリー 迷惑電話編〜
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「ーーーそれでさ、探偵の安室さんが神職の仕事で何で一緒に来ることになったの?」
この質問がコナンから出たのは、小五郎や蘭達、麻衣の一行がいないタイミングだった。風呂上がりのパジャマ姿でコナンと服部と安室が三人でおり、薄暗い廊下を3階の方から1階にかけて巡回している時だ。無論、巡回するのは夫婦の許可を得てから行っている為、プライベートにあたる夫婦の部屋以外の各所を調査していた
「何でも、運転免許持ちの人が同行出来なかったらしくてね。仕事中の足役として車を出して、巫女の仕事も興味深かったから来てみたんだ」
「ふぅーん。ボクはてっきり、安室さんがお涼さんの仕事を怪しんで来たんじゃないかって思ってた。幽霊なんて存在するわけないもん、探偵だったらとことん突きとめたいって思うでしょ?」
「ハハハ、確かにね!」
これは参ったな、と安室は貼り付けた笑みの裏で、ため息混じり呟いた。如何やら、コナンは安室が麻衣達に同行していた事に裏があると勘繰っているのだ。二人からは隠しきれていない怒り、納得がいかない焦燥感、思い通りに出来ない悔しさを手に取る様に感じる。彼らは青江の言葉に言い負かされた事、自分の浅慮さを痛感させられた事で、滲み出ていた闘志に火を灯したらしい。最早、それらの感情は敵意と変わらなかった
「……でもね君達、世間には理屈や常識が通用しないものもあるんだよ」
「そんなもんありえへんわ。西の高校生探偵の俺なら、世の中の謎はぜぇ〜んぶ解ける」
「そんなの新一兄ちゃんもだよ!」
実際、非科学的な事実を思い知った安室の言葉だったが、己の頭脳に並々ならぬ自信を持った二人の若者達は考え直す素振りがない。見事なドヤ顔を決める服部を先頭にし、階段を二階から一階に降った彼らは一番奥の部屋を目指した。そこから玄関の方へ順に見回るようだ。安室は自身の前を並んで歩く服部とコナンの背中を見、ひっそり肩を竦めて「無理もないな」と思った
彼らは良くも悪くも生粋の探偵だ。幽霊話や地方の伝説・逸話を胡散臭い眉唾ものと考えている節さえある。故に、相容れない価値観を持った彼女達に対して、余計に喧嘩腰で否定的になっているのだろう。自分も以前ならそうだった
「(やれやれ……。青江さん達はきっと、勝負する気なんてさらさら無いと思うんだがな)」