第19章 〜大阪心霊現象ミステリー 初日編〜
青江が誰にともなく呟いた言葉を聞いて、麻衣と数珠丸以外が意味を見出せずにパチリと瞬きする。何一つ実りがないこの事実の何が違うのだろう。内心、警察の捜査が甘いのではと考えていた探偵達は、その有様に呆れていただけに彼の発言は戸惑いが大きい
「警察は証拠を確たるソレと示す重要な組織だ、鑑定可能なものなら的中率はほぼ完璧だろう…?精密な機械はきちんとあるし、結果の保証も十全に行う。きっと彼らは威信と誇りにかけて、必死に調査を重ねたはずだ。結果不明はありえない、ってね」
「そりゃあ、まぁ、努力はしたんやろうけどな…」
「おやおや、僕が伝えたいのはもっと深い部分さ。つまりは警察が調べた鑑定可能な範囲は全て除外されてしまう。それって、立証困難なものを脳内だけで組み立てなきゃならない。簡単な話じゃなくなったって事さ」
「「……っ!!」」
警察に対するフォローも入れつつ、自分なりの分析を講じた青江の話に探偵達が動揺で息を呑んだ。小五郎と安室は元と現役の警察官で、捜査が難航する苦労を身に染みて理解していた。しかし一方、若手の探偵である服部とコナンの二人は違う
「……ほォーん、面白いやないか。探偵は解きがいのある謎ほど燃えるもんやで!」
「(ぐ、たしかに…っ。ジッとしてられねぇぐらい気になってるのもあるが、やっぱりこの人達に隠れてでも解決したい…っ!)」
二人の胸中にあるのは、そう、誰にも分からなかった謎を暴く歓喜と闘争心だ。彼らは込み上げてくる期待に、不敵な笑みを浮かべてはやる気を漲らせている。するとそんな彼らに対し、青江が「やれやれ」と言いたげに肩をすくめた。まるで呆れたような、憐れむような、仕方がないと喋りそうな顔で
「なるほど。若き探偵にとっては面白い、解きがいがあって燃えるのか…」
「何や?俺のやる気に文句あるんか?」
「いいや、まさか。意気消沈しないから関心したのさ」
「ちょっ…!平次、なんでちょっと喧嘩腰なん!」
少し意味深な言い方の青江に、少しばかり苛立った様子の服部。それを前者が気にした様子は無かったが、幼なじみの失礼な態度に和葉が咄嗟に服部を叱りつける。すると若干気まずそうな彼が口を開きかけるも、青江の方が先に続く言葉を放った
「───けどまぁ、依頼者夫婦は本気で困っているからね。真摯に対応しないといけないよ?」
