第18章 〜少年は現状に不満を抱く〜
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その後、彼らは一時間ほど四人で語らっていたが、夕方になるとコナンは喫茶店の上の居候先に帰っていく。例え家が近くにあろうと、地域のルールを守るのは大事なことだ。そういうわけで。コナンは会計を済ませて喫茶店を出て行くと、そのまま横にある階段で上の毛利家まで緩慢な動作で登っていく。玄関の鍵を開けて中に入り、閉まったドアに背中からもたれかかった
「はぁあ……信頼できる奴に本音を、か」
ため息混じりに麻衣の言葉を呟いてみて、ふとコナンは一人の男を思い浮かべた。男は安室と同じ褐色肌で、関西弁のきつい部分もあるが、工藤新一と同じく高校生探偵として名が通った好敵手(ライバル)である。名前は服部平次、西の高校生探偵が呼び名だ。恐らく彼なら、今のコナンの心情を最も理解してくれる。そんな風に感じていた
「(だけど、アイツも色々忙しいだろうしな…)」
一瞬、好敵手に話を振ろうかと考えたものの、すぐに首を横に振ってその考えを振り払う。自分の抱く思想が陰鬱なものだと思うコナンは、多忙であろう好敵手に付き合わせるのが申し訳なかった。そして最終的に深いため息を吐いた後、とりあえずリビングを目指して一歩踏み出した時だ
「ん…?蘭かおっちゃんからか…?」
ズボンのポケットにあった、マナーモードにしてあるスマホが着信の知らせで震えだす。コナンはすぐにスマホをポケットから出して、画面で相手を確認すると目を見開いて驚いた。噂をすれば何とやら、電話をかけてきたのは【服部平次】からだった
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一方、その頃ポアロの店内の方では。コナンが去った後も、三人で話を続けていたのだが、ふと鶴丸があっと何かを思い出した声を上げる。麻衣は既にパンケーキを平らげており、鶴丸は残り半分ほどをゆっくり食べ進めながら話を振る
「あ、そうだ主、明日の日曜のことだがな。安室殿に足を頼んではどうだ?!」
「足……?」
名案だと言いたげに満面の笑顔で告げる鶴丸に対し、安室は話が見えず首を傾げて麻衣を見た。するとその視線を受けた麻衣が、依頼だからと多少ぼかして説明を加える
「実は、私の管理する神社に依頼が入りまして。『心霊現象に悩まされているから助けてほしい』と言われたのです。しかし免許持ちの男士が別件で忙しく、移動手段に悩んでおりまして…」