第18章 〜少年は現状に不満を抱く〜
自分なら簡単に解決できた、もっと短い時間で終わらせる。そして今日に至るまで、眠りの小五郎を演じて推理して思った事は、とても嫉妬に溺れた感情……。それを指摘した麻衣は、深く追求する事なく眦を下げて困った様子で苦笑いを浮かべる
「顔に不満だと書いてありました。人生は悩んでなんぼのものです。自問自答で曇りを晴らす事も良いですが、偶に胸中を打ち明けられる方に相談するのをお勧めします」
「……っ!!」
麻衣が密かに身構えたコナンに発した言葉は、何て事はない無難なアドバイス。彼女がコナンの様子を見るに見兼ねて、深入りせずに相談するよう勧めただけだった。恐らく、図星を刺されて気が気でないコナンに信頼出来る相談相手が必要だと思ったのだろう。そんな麻衣の気遣いを感じたコナンは、無意識のうちに体に込もっていた力が抜けて思わず苦笑いになった
「あはは…。ありがとう麻衣さん。今度誰かに話してみるよ」
「ええ、是非とも。溜め込んでいてはストレスになります。解消されるといいですね」
そう言って優しく微笑んだ麻衣は、心からコナンの不満が晴れる事を祈っていた。無論、彼女だけではない。何も言わずに聞いていただけの安室も、鶴丸も言葉がないだけで同じ思いだ。不満が湧かないものなどこの世に存在しない。出来れば、良い方向で解消されるようにと
「……さて、お待たせしました。まずは飲み物をどうぞ」
それから安室が三人分の飲み物を用意すると、彼らの前に丁寧に並べた。加えてオーダーにあったケーキ類も、奥の冷蔵庫から前日と早朝に用意していた分を持ってくる。正しコナンのレモンケーキは装飾がないため、先にカフェオレの隣に置いて麻衣と鶴丸のパンケーキの盛り付けを開始する
「あれ、それって昨日始まった限定パンケーキだよね?」
「そうだよ。五条さんが注文してくれたんだ」
「へえ〜。そういえばメニューに書いてあったね、男の人でも平気な甘さだって」
「ああ、だからどんな味か食べてみたくて頼んでな。坊主も良かったら味見するかい?」
「ううん、ボクは甘い物ってあんまり食べないからいいや」
安室が盛り付けるパンケーキを見つつ、鶴丸とコナンが彼も交えて話すやり取りを聞きながら、麻衣はパンケーキが完成するのを静かに待っていた