第18章 〜少年は現状に不満を抱く〜
これにコナンが思わず良いのか問うてみるが、勿論と頷くと男の後ろで麻衣も頷いた。なので、コナンは「それじゃあ」と彼らに甘えることにした。最奥の席から麻衣、鶴丸、コナンの順番だ。そして席に着くと安室に注文を聞かれ、カフェオレとレモンケーキをオーダーすると、手際良く三人分を捌き始める
「……しかし、この町の警察と探偵ってのは苦労が絶えないな。毎日事件ばっかりなんだろう?肉体的にも精神的にも疲弊してるんじゃないか?」
「うん、知り合いの刑事さん達がいっつも大変そうなんだ。だけどおじさんはそうでもなくて、殆ど依頼がないから暇してる」
同情気味な顔の鶴丸の言葉に、苦笑い混じりで答えたコナンは居候先の堕落ぶりを溢した。警察達は毎日サイレンを鳴らして街を駆け回るが、探偵の毛利は殆ど毎日依頼がなくて事務所の中でだらけるだけなのだと。だから依頼が入れば勇足で向かうし、仕事に向き合う事も何ら苦ではないのだ。コナンも寧ろ難事件であればあるほど、かの探偵の様に活躍したくてのめり込む。それで誕生したのが眠り小五郎であり、今の自分が探偵としていられる大事な仮面だ
「それはそれで、何とも複雑ですね…。探偵に依頼が来ないという事は、少なくとも探偵が熟す内容で市民は困らず平穏に暮らせていて、警察も助力を必要としていないという事です。ですが、それが喜ばしい一方で、やはり自分達の生活が苦しくなるのは酷でしょう…」
「だな。何か副業があれば別だが、それはそれで予定の調整が難しそうだ」
「あー、うん……」
しかし、麻衣と鶴丸の言葉は正にその通りで。コナンは自身の胸をチクリと痛ませた。思えば日頃だらけてばかりの小五郎も、それを叱る娘の蘭も、依頼が無いのを嘆く一方でその日々を良しとしていた。彼らはあくまで、生活を保たせる術に日々苦悩を募らせているだけだった。依頼について何か思う所があるのはコナンだけ。麻衣は、そんな事を思い浮かべて僅かに顔を歪ませるコナンに気づいた
「……何やら沢山納得出来ない事があるようですね」
「えっ…?」
麻衣の小さな呟き声に、思わずドキリと震えるコナン。図星だった。以前、未成年な自分の未熟な部分に気づかされて以来、それでも優秀だと評された頭脳と自負は健在で。いつの間にか周囲に不満を持っている自覚があった