第18章 〜少年は現状に不満を抱く〜
鶴丸は余程楽しみなのだろう。興奮冷めやらぬ様子で、小さな子供のようにはしゃぎだす。その言動は実に無邪気であり、準備を始めた安室の気持ちに自然と気合いが入る
「かしこまりました、少々お待ち下さいね」
「はい」
一言そう断って、安室はその場にしゃがみ込むと下の棚からコーヒー用と紅茶用の器具を取り出した。まずはブラックコーヒーとレモンティーの準備のようである。次にそれらの原材料とカップを二つ持って来て。かちゃかちゃ物が当たる音、お湯を注ぐ音と湯気。純白の刀剣と持ち主の巫女が、それらを見聞きしては期待を持って出来る時を待っている。すると、そんな中で突然店の扉が開かれた
「いらっしゃいませ!……あれ、コナン君一人かい?」
「うん。さっき家に帰ったらお小遣いとメモがあって。小五郎のおじさんは依頼でいないから、おやつはポアロですませるようにって言われたんだ」
「へぇ〜。好きな席に座っていいよ、どこがいい?」
「えっと、カウンターがいいかな」
一度学校から帰ってきたコナンは、家に着くとリビングに置かれたメモの通り喫茶ポアロにやってきた。少年は安室に事情を説明し、好きな席と言われて単身なのでカウンター席を選んだ。そして奥に詰めて座る麻衣に声をかける
「……こんにちは麻衣さん」
「こんにちは、学校お疲れ様です」
「うん、ありがとう。それと、隣のお兄さんってもしかして…」
「ああ。俺は五条国永だ。前に会った事があったな坊主、あの時は感情的だった。酷く言い過ぎて悪かったな」
一言麻衣への挨拶を済ませた後に、見覚えがある隣席の男の事を尋ねてみると案の定だった。彼女がポアロに初めて現れた時、一緒に仲間と語らっていた純白の男。服も肌も汚れなく真っ白で、金色の瞳が綺麗な容姿。名を五条国永と言った彼は、反省を滲ませた表情でコナンに前回会った時の態度を謝った。これにコナンは首を横に振って、こちらこそと返す
「ううん、あれはボクが悪かったから…。だからお兄さんは気にしなくて良いんだよ」
「そうかい?だったらこの話題はもうお終いにするか…。カウンターが良いなら、隣に来たきゃ来ても構わんぞ」
「え、いいの?」
双方後腐れなく以前の邂逅を赦し会うと、何と鶴丸の方から隣に座っても良いと許可が降りた