第18章 〜少年は現状に不満を抱く〜
「……なるほど、それが貴方方の在り方なんですね」
「ああ。持ち主の敵の悉くを斬り捨て、主を守る為の刃にもなる。それが古来からの刀剣の在り方だ」
まるで眩しいものを見るかのように、安室がマリンブルーの両目を細めて麻衣と鶴丸に対して微笑を浮かべる。安室は密かに安心した。国際的な犯罪組織を追う自分よりも、麻衣達の方が遥かに途方もない役目を担っている。まだ未成年の少女にとって酷な仕事だが、それでも三桁に届く付喪神達に大切に想われているならば。審神者の軍人紛いな立場に憤りを感じたこともあったが、それを悲観しない麻衣の強さと彼女を護る付喪神の意思に感服した。彼らに改めて明確な言葉を貰って、大人としても警察としても大いに安堵した。鶴丸は安室のそんな様子を察したようで、当然だと言いたげに自分達を説いて深く頷いた。ふと、そんな中で
「……あの。安室さん、そろそろ注文してもいいですか?」
「あ、はい!どうぞ!」
遠慮がちに麻衣が注文を促した。安室は彼女に言われるまで、本来の仕事の話ですっかり頭から抜けていた。そんな自分のうっかりに胸中で反省しつつ、エプロンのポケットに入れたメモとペンを装備してオーダーに備えた。「おっと、そういえば何にするか、まだ決めていなかったな」メニュー表の数枚と睨めっこを始めた鶴丸が呟く
「ふむ、今回は何を頼もうか…」
「あ、よろしければ期間限定メニューはどうです?麻衣さんはご覧になりました?」
「はい。もう一つのメニュー表に載ってる、これですよね?」
悩んでいる鶴丸を前に、安室がお勧めで紹介すれば麻衣が鶴丸の手にあるメニュー表からソレを指で示した。期間限定メニュー、苺爆盛り黄金パンケーキ。そんな文字の羅列と、美味しそうなパンケーキの写真が載せてあったメニュー。写真は二段の大きなパンケーキの上で生クリームと苺がてんこ盛りに乗っていた。更に皿をぐるっと一周するようにして大きな苺が沢山置かれていた。すると、これを見た瞬間の鶴丸の金色の瞳がキランと煌めく
「おお、おお…!!何て食欲がそそられるものなんだ!俺はこれにするぞ、注文していいかい主?!」
「もちろんです」
「よっし!俺はこれとレモンティーを頼む!」
「私はこちらのパンケーキ、それとブラックコーヒーもお願いします」