第17章 〜手を取り合う架け橋〜
彼らはあまりに信じられない事象を見、目を見開いて絶句する。そんな彼らの様子を見据えた麻衣は、「顕現せよ」と唱えて再び一期を喚び起こす。すると突然、季節外れの桜の花弁がぶわりと舞ったのだ
「なっ…?!今のは何だ?!」
「麻衣さん、これは……」
そして、先程と同じように一瞬で姿を見せた一期一振。しかも衣装が変化しており、英国の兵士の様な装いだ。これに三人は思わず反射的な身動ぎすると、動揺のあまり声を震わせながら身構えた。まるで氷が入った冷水を全身にかけられたような寒気と、自分の理解し得ない事が眼前で起きてしまった衝撃。常識を覆す出来事を前に、彼らが抱いたのは明確な恐怖だ。そうして彼らは警戒した格好のまま、風見と降谷が麻衣へと問いつめる
「ええ、全て現実の事です。ご納得頂けるまで、きちんとお話しさせて頂きます。今のは我々が抱える機密の一部に過ぎません。まずは疑念を晴らして信じて頂くために、説明よりも簡単な実証を致しました」
そう言って降谷達を真っ直ぐ見据える凛々しい瞳は、一切の曇りも嘘偽りの色も見受けられない澄んだものだった
*
麻衣は降谷達に、遡行先の戦場での映像も用いて自分達の最高機密を語り聞かせた。全ての始まりは2205年、過去へと遡る事が出来るタイムマシンの完成だ。そしてこの機械を私的に悪用させる人物達の出現、彼らによって始まってしまった事が歴史改変であると
そして過去を改変させる行為は、その先の未来にあったモノを破壊する愚行だった。例えばある人物を生かす事、逆にある人物を殺す事、またある時は悔いた過ちを正そうとする事など。初めは小さな歪みでしかなかったとて、その現象が果てない未来に多大な影響を齎す過程になるのだ。しかし過去へと渡る者は、古ければ古いほど人間では不可能である
麻衣は『歴史修正主義者』の存在とその思想、彼らが生み出した『時間遡行軍』についても詳細に語り聞かせた。そして『時の政府』が彼らに対抗するべく用意したのが『審神者』という存在、物の心を励起させる特殊な審神者の力、名簿には自身と祖母も名を連ねていると言う
「私達は時の政府が用意した審神者の第一号と言ってもいいでしょう。実家は本丸の役割をし、遡行軍と実際に戦う戦士達の育成、生活を共にする憩い場へと変化しました」