第3章 〜全てはここから始まった〜
そして、声の主を振り返った麻衣はキョトンと目を瞬かせた
「……子供?」
何故ならそこには、つい先程まで離れた席で話に耳をすませていた眼鏡の少年───コナンが、ニコニコと無害そうな可愛らしい笑顔でテーブルの側に来て立っている。逃げられる前の先手だった。行動が妙に手慣れており、護衛達は「何だこいつ」と不機嫌そうに顔をしかめた。
「……ちょっと、いきなり割って入んないでよね。一体俺たちに何の用?」
「ご、ごめんなさい!お姉さん達の話が聞こえて思わず話しかけちゃった…」
苛立ちを隠さない清光の声音で、コナンは直ぐさま猫被りに転じた。その言動は経験値故なのか、上辺だけの反省だろうに素人目では演技に見えない。清光が悪い意味で感心した。
「ふーん…、会話を聞いてたわけね。それで、『警察に任せなきゃ』と?」
「そうだよ!だってお兄さん達、悪い奴からの予告状貰ったんだよね?それならどんな事が書いてあったの?何で警察にお願いしないの?どれだけ凄いお宝なのかな?」
「「「……は?」」」
「ねぇねぇ、僕にも教えてほしいなぁ!」
突然、コナンからしおらしさが消え、マシンガンの様な口調で無邪気に質問を繰り出される四人。お陰で、護衛の三人からは怒りで表情が一気に無くなり、一瞬出た声もドスが効いた様な暗くて低いものになる。すると、しつこい事が苦手な麻衣がそれに苦笑いを浮かべつつ、困った調子でコナンに対し初めて声をかけた
「……残念ながら、これ以上は無理です。もうこの話は終わりにしましょう?」
「え〜、嫌だよ。お話し聞きたい!ちょっとならヒントとか聞いてもいいでしょ?」
「いいえ、駄目です」
「え〜、どうして?普通はお宝って大事に持っておきたいものでしょ?と言うか、お姉さんは『主』って呼ばれたし、きっと豪華な家に住んだり護衛っぽい人達に守られて当然な偉い地位だと思うんだ!それに、仕事は『穢れ』だとか『修行』って単語を普通に使うような事なんだよね?だったら、尚更お宝の元に窃盗犯が近づくの嫌だろうなぁ」
「「?!」」
驚いた麻衣達一同は、声すら出せずにコナンの怒涛の質問攻めに信じられないと愕然とした。何故なら、コナンは盗み聞いたらしい情報で本人に揺さぶりを掛けてきたのである。プライバシーも声量の大きさも慎みが一切無かった