第14章 〜探しモノ〜
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そうして本丸に戻って来た三日月は、探索中の刀剣達からみっちりねっちりお叱りを受ける事なる。更に初期刀である加州からは麻衣への宣言通り道場を貸し切ってでの、夕方までの鍛錬を受けた。その沙汰を言い渡された際、かの刀剣は顔を青ざめさせたと言う
よってその日は時間になるまで三日月による、「あなや〜!!」という悲鳴と清光の怒号、竹刀で打ち合ってるとは思えない打撃が道場の中から度々聞こえてきたそうだ。そして彼らが時間になって出て来た時、清光の方はひらひらと綺麗な桜の花弁が舞うが、三日月は疲労度MAXの状態───所謂、赤疲労となって最早誠の翁になっていた。しかしそんな状態であっても、全員揃って大広間にて夕餉を食べ終え、大浴場で心身を癒した頃には疲れも大方取れている。すっかり元気を取り戻した彼は、一層のんびりとした動作が緩慢だった
そして戌四つ刻の事(現在で言う20時半頃)。彼はとある離屋敷のとある座敷を訪れた。そこは麻衣が使用している離屋敷ではない。しかしそれと隣り合うようにして、本殿の端から繋げている屋敷なのだ。大きさも間取りも大して変わらない。そこで三日月は一振り、簾で見えない上座の方へ向いて座った。明かりとなる燭台は隣で火を灯している。この簾の両端にも明かりとなる燭台が置いてあり、中にいる人物の影を映し出す
「───三日月、またお前は外界に一人で出かけたそうだな」
「ああ、つい浮かれて遊んで帰ってしまってなぁ。何と夕方までの数時間に、小まめな休憩を入れたが清光に相手で目一杯しごかれのだ。まったく、年老いたこのじじいに暇つぶしの苦労をさせるとは……。はっはっは!」
女性にしてはやや低いと感じさせる声。口調がとても厳格なものであったが、三日月の態度は普段通りに穏やかなもので。静寂に包まれた座敷では、彼の朗らかな笑い声がよく響く
「しかし米花町とは、いつも何処かが穢れておる。業と因縁渦巻く哀れな土地よ、我らが守護するモノは闇が深いなぁ。しかしこの世で最も大事に愛し、護りたいと思う者は持ち主だけよ…。それは今や麻衣と其方だ───のう?我らの先代主・桜花や」
そんな忠義に溢れる言葉と共に、彼の三日月を宿す夜空の如き瞳が、真っ直ぐ簾の向こう側を見据える。部屋全体に火が揺らめいて幻想的な中、簾の影の主は握り拳に力を込める