第14章 〜探しモノ〜
「……あの子の両親、私の娘夫婦が鬼籍に入って十数年の月日が経つ。御家の跡取り問題の事もあるが、何より麻衣は私の唯一の孫だ。出来ればこれ以上危険な事態に巻き込まれて、両親のように早死にさせたくない…。しかし誰かの思いに左右されず、自分の意思と覚悟で苦難を乗り越えてほしい気持ちがあるのだ」
「ああ、十二分に理解しておるとも…。十七年間共に皆で育ててきたのだからなぁ。だから、きっと大丈夫だ。みなまで言わず安心して見守っておれ」
先代主の哀愁を含んだ声音と言葉を聞き、天下五剣が一振りはただ優しく諭すような事を告げたのだった───
*
その一方で、同時刻の『時の政府』監査部室では。これから徹夜に臨もうとする数多の人間達、刀剣男士達がギラついた眼差しのままパソコン画面に張り付く。そんな殺伐とした室内で、麻衣の本丸所属の山姥切長義は黙々ととある調査をしていた。彼はひたすらパソコン画面を注視し、キーボードにはタッチタイピング技術ですらすら文字を入力している
しかし、不意に忙しなく動いていた両手が止まった。「これか、あったぞ…」小声で一言呟きながらも、カーソルを操作しダブルクリックしてみたところ。画面に出てきたある内容に、目を見開いて愕然となった
宮野明美、拳銃により20XX年に死亡。事件の直前、広田雅美という名で身分偽装をし、毛利探偵事務所で行方不明となった父親の捜索願いを出している。そして10億円の強盗事件を他の二名の容疑者と共に犯していた。なお強盗事件は無事に解決したらしく、撮られた10億円は後日発見されることになる。死因は他殺だったようだが、現場に証拠がなかったために未解決事件として処理されている
宮野志保、20XX年の○月において行方不明。姉の明美が死亡した数日後に行方を晦ましている
以上が、警視庁に保管された過去の捜査記録と、行方不明者リストの大まかな記入内容だ。妹の宮野志保は、周囲から見ると突然消えたために捜査で必要となる、情報がないため捜索が手詰まりのままデータに埋れていた。一方姉の明美の方は、ニュースで話題だった事件に関わっていたため、それに関する資料が多く載っていた
「(……なるほど。これ以上の有益なデータは無さそうだ。あとはこの情報を保存メモリーに移動させて、直接主に手渡すだけだね)」