第14章 〜探しモノ〜
「俺との約束だ」そう言ってコナンの小さな口に人差し指を添え、少しお茶目な感じに不適な笑みさえ浮かべる三日月。「う、うん…」どぎまぎしながら何とか答える少年だったが、やはり美形の仕草に動揺を隠せず恥ずかしそうに目線を泳がせる。効果は抜群のようだ。顔の良さを存分に発揮している三日月はとてもあざといの言葉に尽きる
「店員殿も口裏合わせをよろしく頼む」
「ええ、分かりました」
次に安室を見るとその一言を伝えられ、安室は満面の笑みで頷き返した。すると別に勝負したつもりもないのだが、謎の敗北感が探偵達に襲いかかる。これまでコナンも安室も容姿を活かして、色んな人に仕掛けてきた側だ。そんな自信を崩壊させるには十分な体験である
「はっはっは!実に新鮮な反応よな。主は見慣れすぎてるうえ容姿を拘らん。常に自分や仲間に容赦がないし、分け隔てなく我らを扱うのだ。良い事ではあるのだが、ちとつまらんと思うだろう?ではな、主の知り合い達よ!」
何故か上機嫌になって朗らかに笑う三日月は、探偵達を置いて言いたい事だけ言うと颯爽と店を出て行った。ドアベルの音が沈黙している店内に響く。彼らはまるで時が止まった様に暫く無言でいた。しかし、ハッと我に返ったコナンが誰にともなく呟いた
「……あれって、ボクらに対する牽制だよね。麻衣さんと仲良くなれたとしても自分達が一番だっていう……」
その瞬間にポアロの空気が何とも重苦しくなった
*
ゴゴゴゴッと大きな音を立てて、九十九神社と本丸間の分厚く重い大門がゆっくり開かれた。そこには下界を楽しんだらしい三日月がおり、その両手には数多の茶菓子が入った買い物袋がある。彼はポアロを出た後からも米花町を徘徊し続け、ついでに自身や仲間の菓子のストックも買ってきたのだ。気分は最高。外界側とされる九十九神社から大門に跨ぎ、半ば擬似神域とされる本丸内に足を踏み入れた
すると次の瞬間、三日月のシンプルな装いだった服が平安貴族の様な青い狩衣のものに変わる。頭は金の髪飾りがシャランと音を立て、腰には鞘に収まる一振りの太刀が帯刀してあった。同時に彼の神力が一気に本丸内へ駆け巡ると、騒がしい地響きがドドドドッと迫ってきた。見れば本丸内で三日月の捜索をしていた刀剣達が、少し疲れた様子で「いたああぁ!」と叫び駆け寄ってくる。大門は既に閉ざされた