第14章 〜探しモノ〜
すると元気づけるためか笑った安室が、「それなら良かった」と小さい子共相手の様にコナンの頭を撫でだした。これでも中身は高校生なのだが、言えるはずもなくて顔を引き攣らせる他ない。コナンは一人「あはは…」と空笑いしつつも黙って撫でられた
けれど。それもほんの数回だけで止まってしまう。安室の手が下されてキッチン作業に入るのかと思ったが、それも無くて不審に思ったコナンが安室の顔を見上げてみると。彼は何とも言えない複雑そうな、物憂げで曖昧な表情を浮かべ、窓の外を何処となしに見つめていた
「……如何かしたの?安室さん」
「……いや、麻衣さんも未成年の女性だったと思ってね。僅か17歳にして凄くしっかりした子だなぁと感心していたのさ」
安室のそんな言葉を受け、コナンもハッと目を見開く。そうだった、彼女は自分の同い年だと今更ながら思い出す。しかし彼女も護衛達も頭脳や価値観だけではない、個人の性格によるのだろうが全員およそ普通ではない雰囲気を纏っていた。コナンも安室も自分に多少の自信があったが、こうなってくると自分の美的感覚が狂いそうだ。最早嫉妬するのさえ馬鹿らしい
多分そう思うのも彼女達の事を、全てでなくてもある程度理解しているからだ。思えばこれまで、相手に対して真摯で誠実な姿勢を見せられてきた。声に出す言葉も全て真っ直ぐなもので、見透かした様に感情を揺さぶり素直な気持ちにさせる。流石は神仏関係に明るい人達だ
そして彼らは全員機密事項をはっきり秘密だと言い、誤魔化しはしても虚偽を言われた事が一切ない。そのうえコナン達の秘密の一端を見ても、そういった隠し事にしつこく探究心を燃やす事もなかった。きっと他者に深く踏み込む事が出来ず、人付き合いに消極的かつ淡白な一面があるのだろう。しかし良く言うならば、他との距離感を取るのが上手で、気軽に傍で過ごせて安心できるという事。だから初対面でも積極性が強い相手や、慣れ易いと付き合いやすいタイプなのだ
こんな風に並べてみると非の打ち所がない。コナンと安室は心からそう思った。上に立つべき素質を備えた少女と、それに付き従う部下達。たしかに麻衣は穏やかで柔らかい雰囲気をしている。佇まいからお淑やかで、正に才色兼備の大和撫子といっていい。そして何度も会話を重ねるうちに、自分の価値感までも塗り替えられていっている気がする